02
そんなとき、転機が訪れる。
「創立、祭…?」
「ああ。今年創立50周年らしいから記念セレモニーをやるらしいぜ。で、代表として俺ら生徒会が出るみてえ」
「そうなんですか」
めんどうだな。そのときの僕は、それだけしか思ってなかったけど。
次の瞬間、ヒノエが何気なくつぶやいた一言で覚醒した。
「芸能人とか各界の著名人が集まるらしいぜ」
―――――芸能、人…!?!?
「それって誰が出るんですかね?」
「さあなー。まあ、学園の出身者とかここに縁がある奴だろうな」
――――それって、もしかして。
吹石紫呉公式プロフィールに書いてあった、出身校は確か―――
「そういえば紫呉サンも、ここ出身だったな」
――――やっぱり!!!!!
僕がこの学園に進学したのも、吹石さんの母校に行きたいという邪な気持ちでしかない!まさかの展開に叫びださなかったのは奇跡だった。
「じゃあ紫呉さんも呼べばいいんじゃないですか?ちょうどヒノエ、今共演してるじゃないですか」
「…ああ、そうだな」
理事長に打診してみるか。
そう言ったヒノエの見えないところでにんまりと満面の笑みを浮かべた。
―――念願の、生吹石さん……っ!!!
セレモニーは3か月後だけど、今から胸の高まりが止まらなかった。
そのあと、ヒノエに理由をつけて旧僕の自室に戻る。
寝室のある部屋の壁には、特大の吹石さんポスターがどどーんと貼ってある。いつも寝る前にそのポスターを眺めてはにやにやとしていた、完璧不審者だったあの頃が懐かしい。
ヒノエがドラマ撮影してたときは学園にいなかったから、ここにも来放題だったけど、クランクアップしてからはそんなことできない。まるで監視のように、ヒノエが僕を見ているから。
今だってほんとは来たら疑われてしまうかもしれないけれど、この興奮はこの部屋に貼って初めて発散される。
「あああ〜〜〜〜っ!!!吹石さん吹石さんに会えるよおお…!!!」
ごろごろと叫びだしながらベッドの上を転がりまわる。
最後に壁に思いっきり頭を打って止まったけど、その場でまたふふふふと笑いを零す。完璧僕、不審者。
「どうしよーっヒノエに誘われて副会長やってよかったよぉおおお!!!」
あのときめんどくさいと一回は断ったけど、ヒノエがまた勝手に僕の名前を副会長のところに書き込んだせいで選挙にでることになって。しかも立候補者が僕以外にいなかったから自動的に副会長になったときは悪夢だと思ったけど。
「あーヒノエにあのとき名前書かれてよかったあああ…!!」
いつもはうっとおしいけれど、ヒノエありがとう!
天井を見上げると、僕の一番のお気に入りの吹石さんポスターと目があった。
あー、寮部屋が全部防音でよかった。
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