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手を繋いで柳の部屋に進む。

「これでもう賭けはいい?」
「うわーちくしょうばれてほしかったような…」
「そしたらやなくんのプライドずたずただからね」

ふふ、と妖艶に笑う真珠にすっかり魅せられた柳。そのまま押し倒してこようとしたところで真珠が柳の唇に人差し指を押し当てストップをかける。

「ちゅーだけって言ったでしょ?」

その言葉で、柳ははっと我に返る。

「お前ほんとやべー…俺一瞬正気失ってた」
「なにそれ。僕の魅力に気づいたってことでしょ?」
「お前いかがわしいバイトとかやんなよ。儲かるだろうけど」
「怒るよ?」

にこりと笑顔で拳を振り上げられ、すぐさま謝る柳。

「てかやなくん、花柄のスカートとか結構乙女趣味な女の子がすき?」
「うるせえ」
「夢見すぎだよもー」

ひらひらとピンク色の小花がちりばめられたヒラヒラのスカートの裾をちょいと持ち上げ、小首をかしげる。

「あーあ、ほんと副会長のときとは大違いだよ…詐欺並み」
「この写真売ったらお金とれるかな?」
「おま…まあファンじゃなくてもふつうに買うレベルだからな…」
「よし、じゃあ撮ってよ」
「…じゃあ待ってろ。カメラ持ってくるから」
「りょーうかい」

ぱたん、と扉が閉まったところで、はああと大きなため息を吐く真珠。

「ほんと緊張した…!」

ばくばくばく、と大きく高鳴る胸を押さえ、ばふっと大きなベッドに沈む。
平静を装っていたけれど、内心は不安でいっぱいだった。

「櫂さん怖いよー……」

笑ってたけど、目は笑っていなかった。
そのときの笑顔を思い出して背筋がぞわわとした。

「でも無事に終わってよかった……」

まだ夕方だし、このあとはふつうにデートするから、とか言ってこの家を出たら、きっと櫂さんに会う機会なんて二度とないし。
ただの副会長だもの、大丈夫。

「なのになんでこんなに不安なんだろー」

ベッドの上にあるクッションに顔をうずめながら考える。

「それにしても会長遅い…」

10分くらいかかってる。こんなに豪邸だからかかるものなのかな?
とぼけた考えをしながらもやもやとした気持ちを抱えて柳の帰りを待つ真珠。
そうしてまた5分くらいたったところで、ガチャリと後ろからドアが開く音がした。

「もーかいちょー、待たせすぎですよー。5分待たせるごとに1000円くらいお金払うって約束すればよか……」

った……。
残りの言葉は、ドアにもたれてにやにやと笑う櫂の姿でかき消された。

「…やーっぱり、恋人じゃなかったんだね」

きゃああああ!!!!
叫び出しそうになるのを気合でこらえる。
これは絶体絶命ですよ!!!会長!!!

「柳は父と電話中だよ。多分このあと父と一緒に久しぶりに食事でも楽しむんだろうね」
「…え……?」
「君のことは俺に任せてって言っておいたから。柳のやつ、安心して俺にゆだねたよ」

ばか!!!会長のばか!!!
まとわりつく恐怖心に涙目な真珠。
どんどん近寄ってくる櫂に持っていたクッションを投げつける。ばふ、とクリティカルヒットしたのにガッツポーズをし、その隙に走りだそうとベッドから降りた。

けれど

「ばーか、逃がすかよ」

にやりと笑った櫂と掴まれた右手に、声にならない悲鳴をあげる真珠。




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