02
景吾に仕事の邪魔だからって風紀室を追い出されて、嫌々ながら生徒会室に戻る。
廊下を歩いてる時点で聞こえてくる転校生の大声に、げんなりとしながら歩みを進める。
「なんでこんなに大きな声でしゃべるんだろ」
わざわざ特別棟に生徒会室や風紀室、理事長室が作られているのは、静かに集中して業務に没頭できるためじゃなかったんだっけ。
もはや根本的にその理念がおかしくなってる。
あーあ、帰りたい。まだ中に入っていないのに、さっきまでいた風紀室が恋しかった。
ため息をついて、目の前の豪華な装飾が施されているドアを開けようとノブに手を伸ばした瞬間、内側からドアが開いた。
「――――わ…っ」
予期せぬ動きに、体が前のめりになる。これなんてギャグ、と思いながら前に倒れていく。だけどふわりと温かい何かに包まれた。
「…?」
それが人の体と気づいて、誰かが僕を受け止めてくれたんだ、と思いながら体を離そうと手を胸にあてる。
だけどぎゅううと力強く抱きしめられたので、離れられない。
何が何だかわかんない、と混乱する中、見上げると。
「…会長…?」
「――――お前、どこ行ってたんだ」
「…え?」
書記も会計も転校生も、会長の行動に唖然とするばかり。ちょっと、止まってないで助けてよ。
「どこ行ってたんだ」
「え…ふ、風紀室…ですけど…」
「また鬼崎(おにざき)か」
ちっ、と景吾の苗字を呟いて舌打ちをする会長。
「ていうか暑いから離してよ」
「そっ、そうだぞトキヤっ、美都なんてほっといておしゃべりしよーぜっ!!ていうかオレ聞いたんだけど、美都は風紀に入りたいらしいんだっ!!だからオレを――」
「―――――あ?」
空気の読めない転校生の言葉で、さらに機嫌が悪くなる会長の声。
「…お前、風紀に入りたいのか」
「?そうだよ。副会長なんてやりたくなかったもの」
思わず本音で言い返す。だって嫌なものは嫌なんだもん。
「どーせ今のままじゃリコールされちゃうしね」
「えっ!?」
「…うそ」
「ほんとだよ。会長たちももうちょっと考えながら転校生といちゃいちゃした方がいいよ」
僕は生徒会がリコールされて解散されても、風紀に行くからいいけど。
一回廊下ですれ違った一般生徒に、気まぐれに転校生が来てからの生徒会をどう思うか聞いてみたことがある。そのとき、彼は顔を真っ赤にしながら「副会長以外の人が仕事してないって有名…」ってゆってたし。だからリコールされても非難を受けるのは僕以外の人ってわけで。
「まあ、僕は風紀行くから関係ないけどー」
なんだか気分が落ちちゃった。仕事する気になれないし、適当に言い訳してまた風紀室に戻ろう。さぶちゃんの紅茶を飲んでる時が一番落ち着くし。景吾にイヤミ言われてもため息つかれても、生徒会室にいるよりは数百倍ましだし。
「じゃーね」
力の弱まった会長を引き離して、また元来た道を戻った。
―――――だけど今の会話がきっかけで、本格的に自分たちの立場が危ないと気付いた彼らがまた仕事を始めたことによって、リコールの話はなくなり、しかも
「ちょっと会長、離れてよ…!」
「どこ行くんだお前。また風紀か、鬼崎のところか」
「うるさいなあもう…!」
なぜか会長が僕に対して口うるさくなるなんて、想定外だった。
おわり
設定をうまく生かせれなかったなー。風紀委員長は別に美都に恋愛感情はもっていませぬ。
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