耳たぶから染まる恋



整いすぎた顔立ちなのに、常に無愛想。クールビューティーと評され、表だって騒がれないよう静かに愛でられていた、そんな副会長。


「ちょっとあなた、ピアスつけすぎですよ」


ジャラジャラと耳元にピアスをたくさんぶらさげている、いわゆる一匹狼と呼ばれる不良とすれ違った時、副会長がそう呼び止めた。
服装を規制するのは風紀だが、あまりにもこれは酷い、と限度を超えた厳つさにとっさに声をかける。

「あ゛?」

野蛮だとみんなに恐れられている不良の啖呵に、一切びびることなくつかつかと近づいていく副会長。むしろまわりでその行動を見守っている生徒たちのほうがびびっていた。
心配する目も気にせず不良の前に立つと、

「…うんしょ」

背伸びをして耳たぶに手を伸ばす。
予想外の行動にびびる不良。
169pの副会長が189pの不良の耳たぶに触れるには、背伸びをするしかなかった。
いつもクールビューティな副会長が背伸びをし、上目遣いで自分を見上げている姿は、それはそれは胸キュンものだった。

「は、腹ちら…!上目づか…!」

不良も冷静に副会長のレアな腹チラ上目遣いをガン見している。

「もう、ざくざく刺さってる…全部ぼっしゅ……ん?」
「…?」

さわさわとピアスの刺さっている箇所を触っていた副会長の手が、あるピアスで止まる。
そしていきなし

「…あなた、チャラチャラしてるだけだと思ったら、見る目ありますね」
「…は?」

そう突拍子もなく不良を褒める。
そうして、とあるピアスを撫でながら

「このピアス、僕の母がデザインしたものです」

ふわり、と今までにめったに見ることができない、レア中のレアの副会長の満面の笑みを浮かべ、そうつぶやいた。
副会長の笑みを真正面で受け止めた不良はもちろん、見守っていたまわりの生徒たちも、その笑みにぼんっと真っ赤になる。

「ふふ」

鈴のような声でからころと笑い声を零す副会長を無意識のうちに抱きしめようとしていた自分自身に驚く不良。

「でもいっぱいジャラジャラつけてちゃ目立たないんで、母のだけ残してあとは没収です」

そう言って一つ一つ不良の耳に埋まるピアスを外していく副会長。



――――こうして、このときの現場を見た生徒たちが、次々に副会長の母がデザインしたアクセを身に着け始め、ふわりとそれを見た副会長の笑顔がほころぶのだった。

((((むちゃくちゃかわいい!!!!!))))


おわり

副会長の母はジュエリーデザイナー。彼はきっとマザコン。






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