03
だけどそれだけではなくて。
憂ちゃんがお手洗いに行っている間、会長がおれたちに向かって一言。
「あんまでけえ声で悲鳴あげんな。憂がびびる」
まあそれで俺にひっつくのはいいけど。
そう男前な顔をまったく歪めず言い放ったから。
「…隊長」
「なあに?」
「もしかして会長って…」
これまた偶然近くに座っていた愛で隊隊長の先輩に話しかけると。
「そうだよ、匡さまは憂ちゃんにベタボレだよ」
べだぼれって、古…。なんてつっこみをする暇もなかった。
「…さっき廊下で、憂ちゃんはみんなのものってゆってたじゃないっすか。いいんですか?抜け駆け」
「…じゃあ、訂正する。…匡さまの憂ちゃんはみんなのもの」
匡さま、憂ちゃん大好き歴10年だからね。
小学生のときから、ずーっと憂ちゃん一筋だから。
「あんな遊んでそうなのに…?」
「うん、憂ちゃん以外抱きたくないって。だから匡さま、まだ童貞だよ」
「まじっすか」
あんなイケメンで人気者な会長が童貞…。高校生活、おれにも光が見えてきた…!
「はやく憂ちゃんと最後までいければいいのにね」
「は!?もう付き合ってるんですか!?」
「そうだよー?」
びっくりだ。
10年も好きだったら、付き合ってすぐ絶対押し倒すと思うのに。
「大切だから手は出せないでしょー」
「?」
「だって憂ちゃんだよ?ぽやぽやーってしてて、そういう知識絶対なさそうじゃん」
「…確かに」
悲鳴にもびびってる純粋な子だし。可愛いし。
ていうかなにより、そういうのに染まってないといいなという願望が強い。
そうやって二人しゃべっている間に、憂ちゃんがトイレから戻ってきて、また会長と楽しそうにおしゃべりしだした。
そうして寝かしつけた憂ちゃんを起こさないようにゆっくりとお姫様抱っこをすると、食堂を後にした。
一切悲鳴をあげず、ただただおれたちはその姿を追っているだけだった。
次の日の朝、首元にお互いキスマークをつけた、初々しさあふれる二人が登校したことで、昨日入学したばかりの生徒どころか、在校生、ましてや教師、理事長までが大きな悲鳴をあげたという。
おわり
初々しい憂ちゃんが愛い。
どうだこの親父ギャグの嵐。
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