02


その夜、食堂でメシを食べていると、悲鳴が沸き立つ。びっくりして食事をする手を止めて顔を上げ、入口付近を見ると。

「ふぎゃっ!」
「あーもういい加減お前慣れろよ」

またしても悲鳴にびびって会長の腕に抱きつく副会長の憂ちゃんがいた。
生徒会専用の席というものはなくみな平等精神なため、ふつうに一般席に座る。
ラッキーなことにおれのすぐ近くに二人が座ったため、会話が丸聞こえだった。友人とさっきまでしゃべっていたトーンより格段に声を小さくして耳をそばだてる。

「今日は匡(まさ)はなににするの?」
「憂(うい)は」
「ボクはーハンバーグー」
「お前昨日、ボクもそろそろ二年生だしセンパイなんだから、子供っぽいのは卒業するって言ってたじゃねえか」
「だからメガネかけてきたじゃん!」
「眼鏡?」

くいっ、と赤ぶちの眼鏡を指先で押し上げて、

「どう?センパイっぽいでしょ!」

インテリだよー!そうやってきゃいきゃい笑う憂ちゃんの可愛さに、会話が聞こえていたすべての生徒が死亡した。




「インテリに見えねえよ。可愛いだけ」
「うー?」

そうやって頬に手をすべらし、憂ちゃんを見つめる会長。なんだかその目つきと手つきがエロイのは気のせいでしょうかー。

「ハンバークセットとAランチお持ちいたしましたー!」

その雰囲気を裂くようにウェイターが二人分の食事を運んでくる。
うわーいと無邪気に喜ぶ憂ちゃんとは対照的に、ちっと舌打ちをしウェイターをにらみつける会長。それにふふんと得意げに笑うと、憂ちゃんからの「ありがとうございます!」という言葉に満面の笑みをこぼし、またキッチンに戻って行った。

「匡のもおいしそー」
「食うか?」
「んぅー」

あーん、と小さな口を開いてねだる憂ちゃんの姿に、なんだかいけない想像をしたのはおれだけではないはず。



お腹いっぱいだと眠くなっちゃうねー、と子供丸出しの言葉をこぼし目をこしこしする憂ちゃんを会長が自分の胸に手繰り寄せる。
ぽんぽん、と頭を撫でると、小さな手がぎゅっと会長の制服を握り、それからしばらくして小さな寝息が聞こえた。
そう、小さな寝息が聞こえるほど、今この食堂は静まり返っているのだ。
それは空気を読んだからというのももちろんあるが、憂ちゃんを愛で隊という先輩後輩関係なしのさまざまな年代の生徒が結成した親衛隊が忠告したせいでもある。その隊長がさっき廊下で話しかけてきたかわいい人だった。
会長親衛隊などと、人気者の生徒には規模は違えど親衛隊というものが存在する。しかしそのすべてを上回る規模と人気が、憂ちゃんを愛で隊だという。
なにしろ崇拝者の会長などが名誉顧問だとか、会計や書記なども加入しているらしい。それ聞いたときは爆笑した。




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