01


この学園には、愛すべき存在がいる。



それは、桜がほころぶ4月のこと。
名門全寮制私立男子校であるこの学園も、同様に春休みを明け、入学式をとりおこなっていた。中学からのエスカレータ組も、おれのような外部組も、新生活に思いを馳せきらきらとした顔で舞台を見上げる。
理事長という美形が挨拶をし、次に生徒会メンバーの挨拶だと美麗集団がぞろぞろと壇上に現れた。

(会長イケメン…うわあ、あの人むっちゃきれい…)

生徒会長という長身のイケメンが挨拶をすると、一部のエスカレータ組が悲鳴を上げる。身長は遠くから見ても、まわりから頭一つ分ほどちっちゃい、だけどきれいな顔立ちの眼鏡が良く似合うクールビューティな男の人に目を奪われる。

「それでは、副会長からの挨拶です」
「はい」

す、とその人が前に出る。
挨拶をしようと口を開いたはいいが、

「…マイク届いてねえ」

長身な会長の位置に合わせてあったため、マイクが副会長の口とずれたところにあった。
ばかでかいホールの一番後ろの人たちにも壇上が見えるようにとスクリーンが設置してあるが、そのスクリーンに

「…やっべ、超かわいい」

一生懸命うーんと背伸びしている副会長の足元が映し出されたとき、男にときめいたことがないおれ含む外部生が全員、思わず内部生よりも大きい野太い声で叫んだ。

「ふやっ…!?」

しびれを切らした会長が、マイクの位置を調整しようやく届いたとき、おれたちの声にびびった副会長がまた可愛らしい悲鳴をあげるもんだから、また叫んだ。
びっくりした副会長は、そのままなぜかお辞儀をしたせいで、マイクにでこを思いっきりぶつけてた。

「いひゃっ!」
「愛(う)いセンパイだなあ…」

そのあと盛り上がりすぎて収集がつかなくなったのもあるけれど、副会長が会長に抱きついてそのままいなくなってしまったため、副会長の挨拶はカットされた。
そのあとの会計も書記もみんな長身のイケメンばっかで、格差社会を感じた。
あの中であんなかわいい副会長一人って、それやばいんじゃねえの?と思ったけど、副会長が消えた方向を見る目線がみな、娘をいたわる父親みたいな感じだったからその考えは撤回した。
その二人も早々自分の挨拶を切り上げて舞台そでに引っ込んでった。予定より20分も短く生徒会のスピーチは終わった。

「うわー、おれ初めて男抱きてえって思った」
「おれも初めて勃った」

入学式終了後、各自自分の寮に戻っているときに近くにいた男とそう会話しながら歩いていると、小さくてかわいらしい生徒に呼び止められた。

「ちょっと!」
「?」
「あなたたちは外部生だからまだわかんないだろうから忠告しておくけど、憂(うい)ちゃんはみんなの憂ちゃんなんだから、手出しちゃだめだよ!」

ぷりぷりと腰に手を当てて怒ってくる男。

「…憂ちゃん?」
「副会長のことだよ!憂ちゃんはみんなで愛でるものなんだからね!無理やり襲ったりしたらただじゃおかないんだから!」

気づけば後ろにずらーっと、小柄なものから大柄でおれよりも体格のいい男が並んでいた。

「…ハイ」

そういうしか、他はなかった。




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