from 純情R


「ゆーい」
「はい」

ここは生徒会室の一室。いつかのように、唯と永知以外は皆用事があるらしく、二人っきりで公務をこなす。

「もうすぐハロウィンだな」
「……はい」
「おっと、ここに偶然ポッキーが「その手にはのりません」…ちっ」

去年のポッキーの日では、ひどい目にあった。
それから唯は、永知に甘い言葉で誘われても乗らないようにと頑張ってきたのだ。結局むらむらときた永知に無理やり連れ去られて、あれよあれよと食べられるのだが。

「ゆーい、じゃあトリックオアトリー「その手にものりません」え」

じゃあ、と更に次の手を出す永知が言い切る前に言葉を遮ると、唯は副会長席の引出しを開けた。

「ふふん!」
「…わーお」

これはたまげたものだ。
引出しの中には、たくさんのお菓子がひしめき合うように入っていた。用意周到、できる副会長はこんなときも優等生だった。

「そうきたか…」
「これでご褒美もいたずらもなしです!」

さあ、反撃開始だ!とばかりに得意げな顔をして唯は永知の顔を見て。

「トリックオア、トリーチョ!」

……しーん。
大事なところで噛む、瀬尾唯。爪がどこか甘い、副会長。

「ぶっ」
「うっうっ…」

一瞬落ちた沈黙を破るのは、もちろん目の前に座っている偉大な変態生徒会長。

「今年のハロウィンは可愛い唯も見れたし、いいかな」

真っ赤になって涙目な唯は、どんなお菓子よりも甘くて貴重だ。
にやりといつの間にか取り出しておいたカメラのシャッターを切りながら、永知は微笑むのだった。



もちろん写真を消す代わりに、と交換条件を突きつけられたのは言うまでもない。


おわり



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