大体カフェなんて経営してる人なんかに、ただの女子高生が作ったものなんてあげれるわけないじゃない。
クオリティが違うのよ、クオリティが。
あっちは商売、こっちは気まぐれよ?

というのは言い訳だけど。
だから気まずくって今日はカフェに行かないことにしてたのに。

「アヤちゃんー」
「きゃあっ!!」

とりあえず君くんとマミリンは一般人だし、一女子高生が作ったものも喜んで食べてくれるでしょ。ということで2人を呼んだ待ち合わせ場所の、いつぞやのマックに足早に向かっていると、プップーとクラクションが鳴らされた。それから、いつもの聞きなれた声。びっくりして振り向くと、西條さんの車が横に停まった。

「――西條さ、」
「今日はどーしたの?」
「え、えっと、用事が……」
「用事って?」
「えー…?」

今日は珍しくぐいぐい突っ込んでくる。なんで。
やっぱりバレンタインにほかの男と会うのがいけないのかしら。…ていうか冷静に考えればそうか。

「ちょっとお世話になってる人にお礼を…」
「君くんとマミリン?」
「うん」
「じゃあ乗せてってあげるから、乗りなよ」
「え、でも」

マックだし、こっから歩いて行ける距離だし。
大丈夫と断ろうとしたけど、有無を言わさないとばかりに強引に乗せられた。

「……アヤちゃん」
「…はい」

やーん怒ってるよー。
空気がね、怖いのよ。温和な森の妖精はどこ行ったの…?!

「別に他の男んとこ行くのに怒ってんじゃないよ」
「そうなの?」
「まあ義理チョコですってあからさまだしね」

さっき強引に乗せられた時に紙袋から見えていたのか、適当なラッピングのモノを指差された。手抜きばれてたー。

「でもさあ、本命に渡さないのはだめでしょ」
「……う」
「ね?」

これまた有無を言わさない笑顔で…。

「だって西條さんとあたしじゃクオリティが違うじゃん…」
「そんなの気にするような男に見える?」
「……見えません」
「ていうか彼女のだったら下手くそでもなんでも欲しいに決まってるでしょ?」

ばか亜矢子。
ぺちっとおでこをはたかれる。

「ほんとに用意してないの?」
「……う」
「なんだその間はー」

あまりにも西條さんが残念そうに言うから、つい本音が出てしまった。
それを敏感に感じ取る西條さん。

「……」
「ちょーだいよ」
「……っ」

―――――ちゅっ。

「……っ!?」
「………いちごチョコ味のリップ」

固まる西條さんに、しどろもどろの言い訳。
痛いからやめようって思ってたのにさあああ!!ばかっ!!

「……早く義理チョコ渡してきてよ」
「…え?」


――――今すぐ亜矢子を味わいたくなっちゃった。


おわり

年上カレシの方はどうしてもえろくなりますなー。
反対に年下はね、こっちが照れちゃう!



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