02


「……なんの用だよ…」
「…携帯、番号変えただろ。連絡つかねえし、家も引っ越すし、……」
「だからって、ストーカーみてえなマネしてんじゃねえよ……」
「……悪い」

とりあえず、寒いからおれの家で話し合うことにした。
心機一転で、あいつから離れるために住んだ家に、あいつを呼ぶ。本末転倒すぎて笑える。前あいつが飲みに来ておれが逃げたとき、あいつは結局家の中に入らなかったらしい。そのまま帰ったとか。おれの家の中に入るのは初めてだからか、きょろきょろと部屋のレイアウトを見渡していた。
酒とインスタントコーヒーしかなかったけど、素面で話さなきゃいけねえこともあると思って、バイトで疲れている体を使ってお湯を沸かす。キッチンに立っているおれの隣にあいつも来る。それがなんだか、無性に切なくて、おれは避けるように背を向けた。


「……ほら」
「…さんきゅ」

淹れたてのコーヒーを差し出す。もう長いこと付き合っていたから、つい癖で渡してしまった、あいつ好みのミルクと砂糖一杯ずつのコーヒー。一口飲んで気づいたあいつが、妙に嬉しそうに笑うから。

「……で、どうした?」

このままじゃ流されると思って、おれは本題に戻ることにした。
そうしてローテーブルを挟んで、おれとあいつは半年以上ぶりに話をした。

「……別れるって、本気、か」
「…は?――本気に決まってんだろ」

それを聞きたくて、こいつは今日来たのか。
――――呆れる。

「もうお前にはうんざりしたんだよ。さすがに恋人が来るってわかってんのに、他の奴抱いてるとこ何回も見せられてたらな」
「……悪かった」

――――悪かった、だと……?

「お前、その一言で終わらせるつもりか………?」


目の前が、怒りで真っ白になった。




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