「アヤちゃーん」

あーもう。
ふわふわしてて、ほんとこの人あたしより年上なの?森の妖精みたいなんだけど。
付き合ってもうすぐ1ヶ月になるカレシは、同年代としか付き合ったことないあたしとしては初めての年上。
だけど、全然そう見えないというかなんというか。
ほんわかしすぎてて、男として見えない、みたいな。
カフェ経営してて、料理上手で、あたしはカレの作るカプチーノがお気に入り。

デートはもっぱら、放課後カレの経営するカフェでおしゃべりすること。
健全な付き合いだわ、まったく。
だけどこういうの、嫌じゃないのは、この人の醸し出す雰囲気に癒されるからかも。

アヤちゃん呼びも、あたしに、というかこの人に合った呼び方。


(あ、メール)


君くんから。
なに、ラウワン行ってきたって?マミリンがボーリングでガーターばっか出すからからかったら、すねたって。
あーもう、マミリンも君くんも可愛い。なにこの相談!!中学生日記みたい!!甘酸っぱい!

「アヤちゃん、何にやけてるの」
「えー?」

やだ、無意識のうちに口角があがってたみたい。
「マミリンと君くんのことー」
「あー、例のかー」

いずれはばれるだろうと思ってたあたしのトップシークレットは、すぐに見抜かれた。
『まみりんときみくんの話してるとき、なんか嬉しそうだもんね』
ほわわーとあの笑顔で言われたら、それは、否定できないわよ。


…でもそこではたと気づく。
もしかしてあたし、彼氏の前ではやっちゃいけないタブーしてた??
ふつう、他の男の話を楽しげに毎回話されたら、それはちょっといらつくわよね……。
あたしなら、この人がそー言ってたらいや、…誰に対してもおんなじか、彼は。
でも無神経だったかなーって反省。

「ごめん、」
「ん?」
「……あたし、マミリンと君くんの話ばっかりしてる?」
「えー?」
「いや、だから、…不快な思いとか、させたかなーと…」

恥を忍んで言ったのに、なにそれーってほわーと笑う彼。
うーわ。勘違いでしたかあたし。それはそれで恥ずかしい。
もういい、と子供みたいにすねて携帯に視線を落としたけど。


「君くんとまみりんの話してるアヤコも可愛いけど、俺と一緒にいる方がもっと可愛いしねー」

しかも色っぽいしー。
ふんわりと付け足された言葉も相まって、赤面。

……妖精でも、あなどれないわ、年上。
悔しいからちゅーしてやったけど、普通に倍返しされたわ。…完敗。


おわり

年相応じゃないの。




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