「明日会えるか?」

突然の君くんからのメール。だけど話すことなんて一つ。
想定内の出来事だったから、特に動揺することなんてなしにすぐに了承の返事をし、待ち合わせ場所を決めてやり取りは終わった。

日曜日のファストフード店なんて、混んでるに決まってる。
めんどいし、相手は君くんだし、すっぴんで行こうと思ったけど、すんでのところで踏みとどまった。あたしも一応女子だしね。
結局ばっちし早起きして化粧して、髪も整えて待ち合わせ場所に向かう。
お昼のピーク時は避けたけど、やっぱり混雑してる。すばやくテーブル席を確保して、ただ座ってるのもどうかと思ってポテトを頼んで先に食べてた。
マックのポテトが一番美味しいと思うのよ。
前マミリンにそう言ったら、「おれもそー思ってた!!」って無邪気に返してくるから、もーほんとかわいくて。
高校生男子の頭を撫でたくなったってどうよ。

そんなことを思い出しながらひとり食べていると、近くに座っていたJKが興奮ぎみにきゃあきゃあ入口を見て黄色い声を上げてた。
ようやく来たか、顔を上げると、やっぱり君くんがいた。
シャツに細身のジーパンなのに、スタイルがいいから目立つ。きょろきょろと探す君くんに声をかけると、返事をしてこっちに来てくれた。
途中JKの視線を感じたけど、フルメイクのあたしに怖いものなんてないわ。


「今日マミリンにはなんていったの?」
「ふつうにアヤコと会ってくるって」

前から思ってたけど、君くん女の子を呼び捨てにするのうまい。いつの間に?って感じ。マミリンの前でもそうやって呼んだんだぁ。

「…それでなんか言ってた?」
「なんでアヤコって呼び捨てするの、おれなんてアヤコちゃんなのに。ていうかおれも行き(以下略)…まあ、喚いてた」
「……ふうん」

ま、想定内の反応かなあ。
けどこれが、あたしに対する嫉妬なのか、君くんへの嫉妬なのかはまだわかんない。
まあむっつりしてる君くんの考えてることは、すぐにわかって思わずにやけちゃったけど。

いつから好きなのって聞いたら、「中学から」っていう真っ直ぐな返事。
王様と王子と一緒じゃないの!!!なに!?最近は中学からほもが増えてるわけ!?
ビバ中学生!!このままじゃ平常心を保てないって思ったから、君くんに何か買えばって促した。君くんが席から離れたら、思う存分悶えたけど。

「お待たせ」

Lサイズのカップを持った君くんが戻ってくる。
それまでには体の震えも収まった。

「ううん。で、本題に入るけど、もう女遊びはやめた?」
「…」
「おい死ねよヤリチン」
「いや、してねえよ!」
「じゃあ何今の間は」

ほんとにしてねえよ、そういう君くん。
この慌てようから、多分もうそっちは完璧にやめたんだと思う。ていうかやめてなかったら、あたしがマミリン貰っちゃう。
だけど、女遊びやめたからって、許しちゃいけないものはあるでしょう?

「携帯見せてみなさいよ」
「…え?」
「おら、見せろや」

あーあ、やっぱり君くんって、前から思ってたけど、すんごいめんどくさがり屋だ、多分。
やーっぱり、あたしの思惑通り。
ちらほら現れる女の子の名前。
君くん、フルネームじゃなくて、いつも呼んでる呼び方で登録するみたい。
マミリンはマミ(あれー、前は間宮だった気がするんだけどー?)、あたしはアヤコ。
母親とかはまだいいけど、年上1,2,3とかなによ、ほんと最低ねこいつ。

あーもういちいち消すのめんどくさいし、いっか。

―――――バキイイッ


携帯って、きれいに割れるのねー。参考になったわ。


「おいっ!!」

きれる君くん。そりゃ怒るわよね。あたしだっておんなじことやられたらぶちぎれるもの。
立ち上がる君くんの胸元を掴み、顔を近づける。JKがきゃあー!!と言いながら騒いでる。
キスでもすると思った?ばーか。
驚いてる君くんに、魔法の言葉をあげる。

「お前マミリンに本気なら、そんくらいの誠意見せろよ。女遊び酷いとか、三枝と一緒じゃんか」



――――ほら、目が変わった。



様付けで呼んでいいかって言われたときは、ぞくぞくするからやめてって答えたけど。
そのあと君くんの携帯に、「アヤコ様」って登録されてたときは、思わず笑っちゃった。


おわり


さあ君くんは本格的に始動しますよ!






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