日曜日のファストフード店という、混み具合ナンバーワンと言える場所に、俺は立っていた。
人ごみとか、騒音とか嫌いな俺が、わざわざ寮を出てまでここのマックに来たわけ。
それは―――
「あ、君くん。こっちこっち」
「おー」
一足先にポテトを買って食べている、この女と待ち合わせをしていたから。
「今日マミリンにはなんていったの?」
「ふつうにアヤコと会ってくるって」
「…それでなんか言ってた?」
「なんでアヤコって呼び捨てするの、おれなんてアヤコちゃんなのに。ていうかおれも行き(以下略)…まあ、喚いてた」
「……ふうん」
まだあいつ未練あんのかってちょっと腹立ったけど、それは別に言わなくてもいいだろ。聞かれたことをそのまま答えただけなのに、含み笑いをしてにやりと笑う。
こいつほんと何考えてるかわかんねえ。けど的確にアドバイスしてくるから、あなどれん。ていうか俺が嫉妬したこととか、全部見透かされてる気がすんのはなんでよ。
「で、君くんはいつから好きなの。マミリンのこと」
「…直球だな」
「まどろっこしいの嫌いだもの。で?」
「…中学から」
「お前らもか」
「は?」
流れるように言われたつっこみに、耳がついていかなかった。しまった。
聞き返したら、なんでもないのよと飲み物に口つける。それなら別にいいけど。
君くんも何か頼んで来たら、って言われたから、お言葉に甘えて財布を持って席を立つ。ちらりと振り向いてアヤコを見ると、なんか体が震えてたけど大丈夫か。
「お待たせ」
「ううん。で、本題に入るけど、もう女遊びはやめた?」
「…」
「おい死ねよヤリチン」
「いや、してねえよ!」
「じゃあ何今の間は」
こいつこええ。
「もうしてねえよ」
「ふうん?…携帯見せてみなさいよ」
「…え」
「おら、見せろや」
こいつこええ。(二回目)
「ふうーん…。ほんとにしてないんだ。でもメアドとかは消去してないの?」
「あー…俺グループ分けしてねえから面倒なんだよ」
「…ふうーん」
バキイイッ
「おい!!」
「ごめん手がすべった」
はい、と何が起きたかわからない俺に平然と逆パカした携帯を渡してくる女。
これにはぶちぎれそうになって立ち上がった俺の先手を打つように、胸倉をつかんでキスできるぎりぎりまでに顔を寄せてくる。予想外の行動に驚くと、
「お前マミリンに本気なら、そんくらいの誠意見せろよ。女遊び酷いとか、三枝と一緒じゃんか」
――――三枝と、一緒。
その一言で、目が覚める。
てか女でこんなドスのきいた声出せんのかよ。
周りの注目は集めていたけど、俺もアヤコもそんなん気にしてる暇もなく。腰をおろし、ため息をつく。
「…さすが。そうだよな…」
「そうよ」
ずずずーと思い切り音を立てて飲むそのジュースは、俺が買ったやつなんだけど。
「今度からアヤコ様って呼んでいい?」
「やめて、ぞくぞくするから」
おわり
アヤコちゃんが男前すぎて爆笑。
携帯はあとでアヤコちゃんが弁償しました。
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