ポッキーの正しい使い方変態:
永知センセの場合。
※ド変態!ほんとに変態!見ての苦情は一切受け付けません!!
――――ハニーの日の出来事を覚えているだろうか。
8月21日、永知が作ったホットケーキを食べた後、なぜかはちみつプレイになってしまったという、唯にとってはまさに「どうしてこうなった」と泣き喚き、永知としては「当然だろ」とはちみつ片手にどや顔さえ醸し出す余裕がある。まさに両極端の反応をし、唯は結局美味しくいただかれてしまった。
そんなわけで。
11月11日。
「ゆーい、今日はなんの――」
「ポッキーの日です」
「…ちっ」
先手必勝とばかりに、まずは永知お得意の今日何の日という攻撃をかわす。とたん舌打ちをした永知にちょっぴりびびるけれど、それでも唯は負けていられない。
今日を無事に終えるために。
「副会長、今日は違うねなんだか…!」
「瀬尾が反論してるぞ…」
ちなみにここは、一般生徒や教師も多く行きかう食堂への道である。
逃げられないようにと永知はいつも、人の多くいる場所で唯を誘う。
「ポッキー嫌いか?」
「きらいです!」
「じゃあ、チョコレートファウンテンは?」
「…え?」
ポッキーの時とはあきらかに反応が違う唯に笑みをこぼし、永知は言葉を続ける。
「チョコレートファウンテン、食堂に用意してあんだ。食うだろ?」
「え!たべ…」
甘美な誘いに甘いもの大好きな唯はあっけなく心が揺れるが、そこをぐっとこらえる。
「い、いりません…」
「ほんとーに?」
「はい…」
「まあ見るだけでもいいから来いよ」
「ちょ…っ」
誘惑に一生懸命耐えている唯をあざ笑うかのように、永知が無理やり手を引き食堂に連れて行く。
食堂の中央テーブルはたくさんのフルーツやマシュマロなど、チョコにつけるための具材が置いてあった。
唯のためではなく、もちろん一般生徒のためにも開放してあるため、たくさんの生徒がそれぞれ手にいろいろなものを持って楽しんでいる。
「ほら、うまそうだろ」
永知と唯が来たことで、生徒たちが自然と真ん中を開ける。「ありがと」そうお礼をきちんと言うと、永知がおもむろにマシュマロをチョコにつけ、唯の口元に差し出す。
それにあっさりと陥落した。
ぱくり、と一口食べ、その甘みに花が咲いたようにほころぶ。それを真顔で目に焼き付けると、永知は次々と餌付けするように唯に差し出した。そして最後に、自分の指をつっこんでディップすると、流れるように唯の口元に差し出した。それをまた流れるように舐める。ちゅぱちゅぱ、としゃぶったところで、周りがやけに静かなのに気付く。
そして自分の目の前に、熱を孕んだ獣がいることにも―――――。
「んむ…ん!?ち、ちがいますっこれは――っ!!」
「…唯」
やっと自分が無意識のうちに永知の指についたチョコを舐めとっていたことに気づいたときは、もう手遅れだった。
「お前さ、たまに俺が予想もしてないことやってのけるよな」
払いのけられることを予想し、それを盾にチョコプレイに持っていこうとしていた永知だったが、まさか舐められるとは思わず、つい真顔になってしまった。
「そういうのが、たまんねえんだけど」
そういうと、唯が舐めた人差し指をべろりと舐めあげる。
それを見て真っ赤になる唯に、
「ポッキーは嫌いみてえだから、違うモンあげるな?」
「い、いらないです!ポッキーだいすきですっ!」
「大丈夫だって。だいぶ太いだけだから。まずいと思うんだったらチョコかけてやってもいいぞ」
「い、いらないです…っ!!」
そうして半泣きで逃走した唯をあっけなく追いかけ、捕まえると、そのまま自室へと連れ込んで行った。
いつもならよたよたと一生懸命逃げる唯を笑いながら追いかける永知だったが、今回は余裕がないのか最初から本気だった。
残された一部始終をすべて目撃した人たちは、
「…あれは仕方ない。会長が正しい」
「むしろよくここで襲わなかった」
「僕、まだどきどきしてるし…」
「勃ったぞオレは」
周りで見ていた関係のない自分たちでさえも、まだどきどきしているのだから。当事者の永知はたまったもんじゃないだろう。
それをわかっているのだから、みんなは唯に今回は同情できないなあ、と残された具材を食べる作業に戻った。
「ぼ、僕ポッキー食べたいです!」
「わかったわかった、あとで食わせてやるから」
「い、いま!今食べたいです!!」
「…唯はわがままだなぁ」
ベッドに寝かせ服をはぎ取る最中、少しでも永知の理性を戻そうと唯が懇願のように必死に言葉を紡ぐ。唯の言葉に胸元に這わせていた手を止めると、傍らにあるデスクの上にあったポッキー(ファミリーパック)を手繰り寄せ、3袋ほど一気に開ける。
「上の口じゃあ収まらないだろうから、下の口にも食わせてやるな」
「…?……!いらないですいらないです!!」
「遠慮するなって」
もっと太いもんいつも食ってるだろ?
おわり
それにしてもひつ、ノリノリである。
反省はしている。後悔はしていない。
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[mokuji]