もしもがドMだったら...



「トリックオアトリート」
「…尊、ハロウィンって10月31日だよ。今、何日か知ってるの?」

教師の特権だとかで、思い切り職権乱用をして陽摘の寮の部屋の鍵を手に入れた尊は、毎日のように陽摘の部屋に無断で出入りしていた。
今日もリビングのソファでくつろいでいた陽摘を、突然やってきた尊が押し倒している状態である。

「てか、無断で来ないでよ。気持ち悪い。犯罪だよ」
「…」
「ちょっと何回も言ってるけどこんなんで喜ばないでよ!!」

感じる尊の熱に、ドン引きする陽摘。その顔さえも、尊にとってはスパイスである。

「あーまさか陽摘がこんな性格だったとはなあ…」

ぶりっこ時代の陽摘のときは、従順でなにを言っても尊に文句を言わないからと、好き勝手していた尊だったが、本性を知った時は、胸に電撃が走った。
――――罵られるって、こんなに気持ちいいのか…!!
変態の出来上がりである。

「僕だって、尊がこんなに変態だとは思ってなかったよ…」

昔は整った顔と俺様な性格で随分といろいろな人と関係を持っていた尊。それが統臥の恋を最優先している陽摘にとっては都合がよかったから長続きをしていたのに。本性を知ったら引かれると思ったから出したのに、まさか目覚めさせてしまうとは。陽摘一生の不覚である。

「だってハロウィンは、陽摘はあのクソ野郎とか親衛隊とか優先したじゃねえか」
「当たり前でしょ。なんで僕が尊を優先するの?」

イベント好きの学園であるから、当然ハロウィンも盛大に開催した。
陽摘はネコ耳メイドに扮し、たくさんの生徒たちを血の海に溺れさせていた。

「だから、なんもない日にやってみることにした」

トリックオアトリート。
もう一度さっきと同じ言葉を繰り返す尊に、呆れながらもおもむろにポケットに手をつっこみ、一つの飴玉を取り出すと。

「ほら」
「…なんだ、持ってんのか」

なかったらこのままお仕置きでヤろうと思ってたのに…。
ちなみに尊は、ベッドの上ではなぜか変わらずSである。
あからさまに残念がる尊を後目に、いちごみるくと書かれたうすピンクの飴を取り出す。
それを人差し指でつまんで、尊の唇に入れる
―――と思ったが、それはおあずけで。

「…ほら、どっちがほしい?」

妖艶にほほ笑む陽摘と、人差し指に挟まれたいちごみるく。


「…トリートで」


あれ、俺が陽摘に持ちかけたはずなのにな…。
ふと沸いた疑問は、いちごみるくを口移しされたときには、どっかに行ってしまった。



おわり


陽摘様のりのりやん。
痴女っこ痴女っこ。









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