可愛い子こそ旅をさせない01
「はじめてぇーのぉちゅうー」
「…」
「ちょっとぉ会長ノリ悪いよー」
「あ?」
ここは放課後の教室。
あまりにも悲惨な点数ばかり取る会計に、俺じゃもう教えられないと教師に泣きつかれた会長。内心よし来たと思いつつクールに「仕方ないですね」とそっけなく返した。こんなチャンスめったにねえな、と意気揚々と会計に勉強を教えることを承諾した。
――――しかし。
「おっまえ……こんなんで社会でれるとおもってんのか…!?」
「えー?」
「洒落の洒は棒一本いらねえよ!それじゃあ酒じゃねえか!!」
「わお!アハ体験!」
ほんとだー、一本なあーい!
きゃいきゃいと騒ぐ会計に、いつもなら可愛いな襲ってやるぞつっこむぞこんちくしょうと危ないことばかり考えていた会長だが、今はそんなこと言ってる暇はない。
今はただ、会計のあほ具合にドン引きである。
「お前数学とか理系はいいのに、国語はほんとだめだな…」
「日本語しゃべれるからいいもん」
「もんじゃねえよいつもの俺なら可愛いって許したけどだめだから」「なあにぃ?早口できこえなかったよぉ…」
結論・どっちもばか。
「カラオケいきたいなあー」
「…」
「おれねぇ、はじめてのチュウ超うまいよー」
「ちゅう…」
会計のいきなしの話題転換には慣れたものだと、いつものように特に返事もしない会長。それを全く気にせず、のんびりと会話を続ける。
そしてある単語を口にしたとき、きらりと会長の目が光った。
「なにがうまいって?」
「えー?だからぁ、はじめてのチュウー」
「…」
ちゅう、と口を突き出すしぐさに一人もだえる会長。
「はじめてぇのぉちゅうー」
「…」
「ちがうでしょー、ここで会長はちゅうってゆわなきゃー。合いの手合いの手ぇー」
「……」
やっぱり、馬鹿な子ほどかわいい。
おわり
生き生きとして書いてしまった。
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[mokuji]