「ちょ、離しなさ―――」 「だって悠平、オレのこと好きって言ったじゃん!!!」 「はあああ!?!?!?なに言って、」 慌てる悠平さん、めずらしい。なんて思いながらその光景をぼーっと見ていると、はっとしたように悠平さんがおれを見た。 「た、多恵っ!!!」 「え」 「〜〜〜〜ああもうこのクソガキ、離れろボケ!!!!」 おれを見てさらに慌てた悠平さんが、転校生の股間を蹴りあげて脱出する。 「多恵、多恵、ごめん…っ!」 「な、なにが…」 「だって多恵、泣いてるじゃないか……っ!」 「え…」 ぼーっと見てるんじゃなくて、視界がぼやけているだけだった。 つーっと涙が流れる。それを見てぼやけた悠平さんがぎゅうううとおれを力強く抱きしめる。 「俺は多恵が好きだ、多恵が小学生で俺がここの高校に通っていた時からずっと好きだった、愛してる!」 「えっそれは引く…」 「あっちの部屋には多恵の写真が飾ってあるし、あのパズルだって全部作れば多恵の顔になるんだ…!」 「えっきも…」 涙は乾いた。 「なんだよっ!!!オレのこと好きだって言ったのは!?!?」 「知らねえ、俺じゃねえよ!」 「だって転校初日にここ来たとき、オレのこと見ながら好きって言ったじゃん!!」 「………ああ、あれか」 言ったのかよ!! 思い当たる節があったと合致した悠平さんにつっこみたいのを我慢する。 「あれは新しく転校してきた子の名前がメグミだって言うから、多恵のこと思い出しただけだよ。それに好きだとは言ってない」 「じゃあなんて言ったんだよ…っ!」 「俺は君の手続きの書類の名前の欄を見ながら、こう呟いたんだよ。メグくん抱きたいって。それをお前が勝手に勘違いしただけだろう?」 さっきから、俺って言ったりお前って言ったり、おれの知ってる悠平さんとは違う人すぎて驚き続けている。しかも気持ち悪いし。 ← | top | → ×
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