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都会の喧騒の届かない山奥にある、全寮制の男子校に通ってもう10年になる。
初等部からずっとここに通ってきた。
男同士の恋愛とかいろいろあるけれど、関係あるのは一部の美形なやつらばっかで、おれはなんも関係なく育ってきた。

昼休みになって食堂に向かおうと仲のいい友達数人と歩いていると、ピンポンパンポーンという校内放送の合図のチャイムが鳴った。
休み時間で大きくなっていた喋り声も少しトーンダウンして、続く声を待つ。もちろんおれも。

「えー、メグくん、メグくん。至急理事長室に来てください。繰り返します、」
「だああああ!!!」

その声を聞いた瞬間、反射的に大声をあげてしまう、おれ。
マイク越しにふっと笑う声が漏れた。

「きっと僕の放送を聞いて奇声を上げてるだろうね。よし、近くにいるみんな、メグくんを僕の部屋に連れてきてね。以上」

ピンポンパンポーン
また軽快な音を立てて放送が終わる。
と同時にこっちを向く廊下の生徒たち。

「だってさ、メグくん」
「相変わらず職権乱用すごいなあ、お前の叔父さんは」

にたにた笑いながら距離を縮めてくるのは、一緒に昼飯をとろうとしていた友人たち。

「ちょ、いや、おれはいかね、」
「「「はい連行ーーー!!!」」」

ずるずるずるずる。
男3人の力にかなうはずもなく、おれは理事長室に強制連行された。




「やあ、よく来たねメグくん!今日はどうしたんだい?」
「ど、どうしたんだ、いじゃ、ねえよっ!!!」

ぜえぜえ。全力で抵抗した証拠に、息を荒げながらおれは目の前でにこにこしれじれしく笑う理事長、――叔父の雨宮悠平(あまみや・ゆうへい)さんを見上げる。

「ていうかメグって呼ぶのやめてよ!」
「いいじゃん、多恵(たえ)に恵って字入ってるし。一緒一緒!」
「全然ちがうよ!」

毎回毎回何かとおれを呼び出す悠平さん。しかも決まって校内放送を使って呼び出すから、そりゃあ注目もあびるしで大変だ。
おれが中学の時悠平さんが理事長になってから呼び出されるようになって、いつもいつも肩身の狭い思いをしてたけど、この学園の奴らがみんなノリが良くて助かった。
最初の方はみんな戸惑ってたけど、一時を境に積極的におれを強制連行するようになったのだ。その心境の変化におれ自身が戸惑って、悠平さんや友人たちに何かあったのか聞いたけど、なんにもーと口をそろえて言うもんだから、真相は闇の中だ。






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