05


「なー、愛斗。キスさせろよ」
「ひええっやぶやぶ!」

そうして10月、現在。
放課後は部活に精を出し、それが終わったら愛斗いじりに全力を尽くす。
24時間SPのように愛斗のそばにいる左慈や親衛隊のせいで、なかなか手は出せないが、いつからかあだ名で呼ばれるようにはなった。

「やぶやぶがきたーっ!左慈ーっ!」
「離れろ害虫」
「お前も言うか」

大藪だからやぶやぶ…。愛斗らしい安直で、しかも、俺には似合わねえあだ名だ。
だけどちいせえ愛斗が「やぶやぶー」と呼んでくるのは、正直下半身に直撃。

「しつこいですよ、やぶやぶ」
「お前がやぶやぶって言うな」

最近、対俺用だとふざけたことをぬかして木刀を持ち歩くようになった左慈は、出会ったらとりあえず木刀を振り回すようになった。
ちなみに左慈は愛斗に対して恋愛感情ではなく、もはや父親の立場でいるらしい。気持ち悪いと一蹴してやったら、ガチでぼこられた。正直先輩に殴られた何倍ものダメージを負った。

「てゆーか僕、やぶやぶより年上なんだから敬語使ってよー。なめられちゃうじゃんー」
「キスさせてください」
「ちがーう!」

とりあえず敬語で迫ったら怒られた。
ていうかもはや俺のことがなくてもなめられているから、今更だとは思うが。

今までのように、左慈にちょっと苛められたからって引くような軟なオトコじゃねえ。
どうせ1ヶ月もしたら飽きるだろうと誰もが思っていたらしいから(これは集会のときに隣にいた男に聞いた)、もう3か月目に入ったと言ったら隣の男に大げさなくらい驚かれた。ボコッといた。

「左慈ー」
「なんです」
「そろそろ愛斗くれよ」
「ほざけ」

本気だっつーのに。


正直俺と愛斗の体格差だと、押さえ込んでキスするのなんて簡単だ。
それをしないのは、本気で愛斗を自分のモノにしたいと思ってるからで。

あの集会のとき、隣の男が言っていた、愛斗が風紀委員長になってから暴力事件が減少した理由。
理由は簡単。愛斗は学園から愛されている存在だから。ただそれだけ。
愛斗の悲しむ顔は見たくない、どんな険悪な雰囲気の場面でもあんなふうに無邪気によられたら毒気が抜ける。
実に愛斗らしい理由だった。


だけどもうそろそろ、俺だけに愛される生活もいいだろ、愛斗。


「あー俺も風紀入ろうかなー」
「やだ!!」
「間に合ってます」


……まだ遠いか。



おわり


ワイルド要素がなーーい。ヘタレになってしまいました…すみません。
そしておそくなって誠に申し訳ないです….oh…
愛されちびっこが好きすぎてごめんなさい…





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