04


「まあ、勝負の世界は厳しいですからね。まず試合に出れる人数が限られている。彼は確か今年のバスケのスポーツ推薦で入学してきてますし、まあ、そんなところですかね」

【彼】と言うところで俺を見て、また視線を戻して話す。

「おお、でっかいもんね二人とも」
「…」
「左慈もねっ!」
「どうも」

バスケ部かー。僕もこんだけおっきくなりたかったよー。
近くで見たらさらにちいせえ体が無邪気に笑って揺れる。

「君はほっぺ赤くなってるけど、痛い?」
「っ」

ぼーっと二人のやり取りを眺めていた時に、視界に急にチビの顔が入って素でびびる。

「いや、別に…」
「でも一応は冷やしたほうがいいよね。左慈、氷持ってきてくれるかな?」
「はい」
「ありがとね」

パタンと左慈が風紀室から出ていく。
おいおい、こんなちっこいの一人にしていいのかよ。いざとなればこんなやつどうとでもして逃げれる…。
そう思ったとたん、隣の扉が開いて一斉にほかの風紀委員たちが顔をのぞかせる。
あ、いたんすか。
さすが親衛隊、守る人の危機は察知するんだな。


「まあ、レギュラー争いとか部活でもめるのはしょうがないよね」
「…」
「だからと言って、暴力はダメだよ。やるならきちんと、バスケで見返さなきゃ」

ね?
そう言って、つったったままの先輩の頭を撫でようとぷるぷる足先を伸ばして、ついでに手も限界まで伸ばしてやろうとするけれど、届かない。
しまいには「しゃがんでー」と懇願してようやく撫でていた。

「ほら、謝ってー」
「………」

先輩が何とも言えない顔で愛斗を見つめる。

「こらっ」
「………大藪、すまん」

謝らないことにしびれを切らし、まったく怖くない顔で怒られている。なんか近所の子供に怒られる兄貴みてえ。
その光景が微笑ましいと言うか、なんというか。とりあえず拍子抜けして、笑いがこぼれる。

「あー…、いいっすよ、もう別に。気にしてないんで、あんま」
「そっかー。うん、じゃあ帰っていいよー、おつかれね」

にこにこ。
ほんと近所の小学生みてえ。
先輩はお咎めなしと言うことで先に帰って、俺は手当をされるために風紀室に残った。

二人きりの空間。
身長がいくつだとか、クラスはどこだとか、そういうたわいのない会話をしているうちに、ちっちぇ頭を撫でたくなった。

「わっ」

あーもう撫でてたわ。
わしゃわしゃ。さらさらだな。抵抗してこず身を任せるのを見て更に調子に乗って髪に指を通してみる。
黒髪もキューティクルあるし。そういえば俺、昔から食ってた女、ギャル系じゃなくて清楚系の方が多か、

「ふふー。きもちー」

にこにこ。
頬を赤く染めて、にんまりと俺を見上げてくるこのチビに。


「おい、ちょっとキスさせろ」
「……え?」


「「「「「離れろ害虫」」」」


思わず口から出た言葉にチビが反応する前に、数人のゴツイ男たちのハモりと、氷が俺めがけてぶっとんできた。




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