03


このガタイのせいか、上級生に目を付けられることが多い。
目つきが悪いとか、態度がでかいとか。知るかよと思うけど、部活の先輩にやられたらなかなかめんどくせえ。

「なあ大藪、お前調子乗ってんじゃねえぞ」
「乗ってねえすけど」
「あ?」

1個上の元レギュラーの先輩が、用があると教室に来て連れて行かれた先は空き教室だった。
俺が入学するまではレギュラーだったせいで、ことあるごとにいちゃもんをつけてくるめんどくせえ男だ。

「だいたいお前は…」

うぜえ。
心の中で言ったつもりだったのに、無意識のうちに口に出していたみたいだ。
目の前の男の顔がみるみるうちに真っ赤になって行く。沸騰してるやかんみてえ。
他人事のようにぼーっと自分より10pくらい小さい男を見下げる。

「っち、大藪てめえ!!」
「うお」

まさか手をあげてくるとは思わなかった。こういう軽率な行為をして、部がどうなるかわかってんのかこいつは。
それでも急な攻撃は避けきれねえ。右ほおに一発拳を食らう。

「って…」
「うぜえうぜえうぜえ!」

いてえからそりゃ睨むのも仕方ねえだろ。
それにもかっとしたやつが、また殴ろうと手を振りかぶる。そろそろ堪忍袋の緒も切れる。一回目は黙って殴らせてやったが、次は容赦しねえ。
完全に頭に血が上った俺はアッパーを決めてやろうと拳を顎めがけて振り上げた瞬間。


「すとーーっぷ!!!」


完全に場違いな声が間抜けに響いた。



「あ?」
「っ!」


いきなしの部外者に殴ろうとした手も止まる。
声が聞こえた前のドアを見ると、いつかの集会で見たちっちぇえ委員長が仁王立ちをしてた。

「はい!だめ!左慈(さじ)、れんこー!」
「はい」

後ろからぬっと長身の副委員長が出てくると、あれよあれよと風紀室に連行された。
逃げようと思ったけど、俺と先輩を引いて歩く左慈というやつの力が強すぎて、振りほどくことができずそのまま連れて行かれる。

「さーさー、二人とも、座って!」
「……」
「何飲みたいかな?えと、今はっ!……ごめん、オレンジジュースしかない……」
「愛斗、そんなに落ち込まない」

意気揚々と飲み物を聞いたわりには冷蔵庫を開けると何もなかったらしい。背中からすげえ落ち込んでいるオーラを一瞬で発した。

「喧嘩の原因はなにー?」
「………」
「……大方、部活関係でしょう」

先輩は答えずただうなだれるばかりで、代弁したのは左慈だった。




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