02


次に起きたのは、盛大な拍手が起こったときだった。
最初は何が起こったのか野生の本能レベルで飛び起きたのだが、なんてことない、生徒会が全員挨拶をして退場するだけだった。
毎月こんなこと繰り返してんのかよ…。たる。
やっとこさ終わったかと大きく伸びをしたとき、また今度は会長とは違う身長の高い男が出てくる。

…まさか。
予感は的中。

「次は、風紀委員長の挨拶です」

まじかよ。
たるすぎる、次からはもう行かねえ。
心に決めて寝ようとした瞬間。

「………なんだあれ」


風紀委員長と言うから、どんなゴツイ奴かと思いきや。


「ちっせえ」


もしかして小学生の俺の弟と同じくらいなんじゃねえの?
そう思うくらい、ちっせえ男が現れた。
黒髪の制服をきっちり着たチビ。


………まさか。
まあ、当然これも的中。


「風紀委員長の2年S組、矢野愛斗(やの・まなと)です」


まじかよ。しかも年上。まあそりゃそうか。
なんだか興味が沸いた俺は、隣に立っていた知らねえ男に声をかける。

「なあ。あのチビまじで委員長なわけ?」
「はあ?お前知らねえの?」
「集会出るの今日が初だわ」
「あー、そういやいっつも隣空いてたわ」

チビからは一度も目を逸らすことなく、小声で会話を続ける。

「アイちゃんだろ」
「アイ?」
「愛斗のまなが恋愛の愛って書くから、アイちゃん」
「なーる」

これまた可愛らしいあだ名で。
だけどそう名付けられても仕方がねえほどの愛らしい顔をしてる。

「なんであのチビが委員長なわけ?」
「あー。なんでも前年度の委員長に指名されたみてえでさ。ほら、アイちゃんあの身長と外見だろ?親衛隊も猛者レベルの奴らの集まりでさ。そいつらをほんとは風紀委員にしたかったんだけど、放課後は親衛隊の集まりがあるからって断られてさ。
で、そこで委員長がアイちゃんを委員長にすればついてくるんじゃねえって考えたんだってさ」
「まじかよ」
「結果は、まあ見ての通りだけど」

ちなみに副委員長が、チビ委員長の親衛隊長らしい。ひょろ長いだけかと思いきや、武道の達人らしい。剣道部の主将とか。見えねえ。

「それにさ」
「あ?」
「アイちゃんが委員長になってから、めっきり暴力事件とか減ったんだよね」


ホモ校だからか、校内では数年前まで暴力事件が多発していたらしい。
たった一人の転校生が来たせいで、学園が大荒れしていた時期があったとか。暗黒の時代と今でも語り継がれてるらしい。


「なんでだよ」
「なんでって、まあ、そのうちわかるだろ」
「はあ?」

ああ見えてあいつも武道の達人とか?
そうこうしている間に、話は終わったみたいで、チビはもういなくなっていた。



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