01


小さいころから、成長が早かった。
幼稚園のころから背の順では一番後ろを譲ったことはなかった。長身を生かして小中高とバスケ部に所属している。
体格もいいせいか、人よりも三大欲求が強く、勉強はからっきしだめだった。
中学でも最下位争いをしていた俺が受験で部活を引退して勉強を始めたからって、そう漫画みたいに成績は上昇しない。
このままじゃ地元の底辺高校しか進学できないと言われた俺が残された道は、スポーツ推薦だった。

バスケでスポーツ推薦を貰った先は、全国でも有名な私立の全寮男子高校だった。
中高一貫のそこで高校から入るのはアウェイじゃないかと思っていたが、意外と外部入学の奴も多いみたいで、思ったよりはすんなりと溶け込むことが出来た。内部の奴もいけすかない奴ばかりだと思っていたけれど、そんなことは全くなかった。
ただ予想外だったことは、高校では男同士の恋愛が当たり前に存在していたっつーことだ。

中学のときは寄ってくる女子を適当につまみ食いしていたが(それでも同級生や後輩には手を出さなかった、一応な)、高校では女みてえな男がわんさかいた。
そんな奴らにとって、俺の存在は格好のエサだったらしい。

「大藪(おおやぶ)くーんっ!」
「…おー」

今日も来た。

「これ、クッキー!」
「おーサンキュ」
「うんっ」

お菓子を渡してそのまま小走りで掛けていくオカマみたいな男。漫画かよ。
昼飯までもたない腹だから素直に貰う。ぼりぼり食いながら、月1回にある全校集会が始まるのをぼーっと待つ。
実はこの集会は、今まで寝坊してたりとかして、もう7月だっつーのに一回も出席したことがなかった。

やがて舞台上にイケメン眼鏡が出てくる。
あれは確か副会長だな。


「静粛に」


きゃーきゃー!!!!!
静粛にって言ってただろ。そう思いながらクッキーを食べる手は止めない。


「黙れ」


ぴたっと音が鳴りやんだ。
驚いて俺も思わずクッキーを食う手を止める。
前の奴らを見れば、幸悦とした表情で副会長を見つめていた。

「よろしい。では、次に会長からの挨拶です」

そうして眼鏡の代わりに、次は俺よりは背は低いだろうけどそれでも180越えはしているような奴が出てくる。
あれが生徒会長か。そういえば生徒会はそろいもそろってイケメンばっかだって聞いた。なるほどな。
俺は集会っつーもんは退屈だなあと思いながら、寝ることにした。自慢じゃないが俺は立って寝ることができる。



- 69 -

top

×
- ナノ -