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「そういえば最近、女連れ込んでないなーお前」
「………そうだね」

ちょっと遅めの朝食を食べて満足したおれは、ソファに座ってぼーっとテレビを見ていた。コーヒーを持ってきてくれた千歳にお礼を言うと、にこりと優雅に笑ってそのままおれの隣に座る。
昨日録画しておいたコナンでも見るかーと、朝から映画鑑賞をしていると、本当に突然、その言葉が口から出た。

何も考えないでそう言うと、千歳がちょっと目を丸くしてから頷いた。

「なに、とうとう修羅場った?」
「違うよ」
「えー」

千歳の連れ込む彼女って、みんな香水くさいやつらばっかだったから、おれとしてはもう連れ込むなって思ってるけど。

「全部無駄だってわかったからね」
「?」

ため息まじりにおれを見る。なんだよう。

「まさか吐かれるなんて思ってなかったからね…」
「う、それはごめんって…」



2ヶ月くらい前、おれが酒に酔ってべろんべろんな状態で帰ってきたとき、またもや女を連れ込んでリビングで抱いていた千歳。
まあ例にもれずやっぱり香水くさい女で、…酔っぱらった状態のおれはすぐにノックアウト。精液の生臭い匂いと香水の悪臭。そりゃもう盛大にぶちまけたよ。

そんで目が覚めて上に乗っかってる千歳から漂う女物のくせえ香水の匂いにもう一回。千歳のベッドをめちゃくちゃにしてしまった……。
目が覚めたら、げっそりとして疲れた様子の千歳が目に入った。
酔っぱらって記憶がないおれに、事細かに千歳が昨日の惨劇を説明してきたとき、おれは人生で初めて土下座をして謝った。



「匂いがきついからだめなの?」

その日、ソファに座って二人並んで話し合った。
おれが匂いのきついものが大の苦手だと言うと、だからか…と遠い目をしていた。

「そう、だからさ、別にお前が女連れ込むのはいいんだよ」
「え」
「まあたまるものは溜まるしね。彼女とか作るのが一番だけど、お前そういうの嫌いそうだし。ヤってたらおれもほかのとこ泊まるとか空気は読むからさあ、せめてリビングでヤるのはやめよーぜ!あと香水くさい女は連れ込まないと嬉しいです!」

言ってる途中で千歳がすげえ顔した。
なに言ってんだお前、みたいな…。でも言ったもん勝ちだし、おれは知りませーん!



それから今日まで、千歳が誰かを連れ込むことはなかった。





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