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龍獄院藤(りゅうごくいん・ふじ)には、前々からお気に入りのおもちゃがいた。
ちょっかいをかけると、すぐに反撃をしてくる。
だけど最近、反論をしてるときにぷるぷると拳を握りしめてるのを発見した。まるでそうだ、小動物が虚勢を張ってるような。
――――なんだこいつ。
同学年だってのに敬語で話す、いけすかねえ美人。最初の印象はそうだった。
でもこいつ、ほんとは超よええんじゃねえのか。
クールで冷静とか言われてるけど、俺にはそうは見えない。
ああ、そうだ。

「うさぎみてえ」
「っ!?」

生徒会に引き渡す書類を持ってきたとき、俺が勢いよく開けたドアに尋常じゃないほどびびってるあいつをじっと見つめていると、視線が合った。
とたんびくりと震える体。それにとある小動物を思い出した。
合点がいった瞬間、思わず手加減なしでデコピンしたら、じわーと涙目になっていくアイツ。

俺が見ていることに気づいたのが、慌てて目元をこすり涙を拭きとると、「何するんですか!」と睨んできた。
美人の泣き顔って、そそる。
舌なめずりをした俺を見て、慌てて双子と書記が助けに来た。

「龍ちゃんはすぐ手出すからだめ!」
「そーだそーだ!」
「…茅、純情…」
「うるせえ、いくら俺でも男なんかには手ださねえよ」

わあわあと喚くやつらを鼻で笑いあしらう。
俺は突っ込むなら女専用だっつーの。

気丈に振る舞いながらもびくびくと俺を見るアイツと目が合う。からかい混じりに「なんだもっかいしてほしいのか?」と言ったら、あの痛みを思い出したのかぶんぶん勢いよく首をふって拒否する。

今思い出してもこみあげる笑い。

「……はっ、あいつがあんなカワイイ性格だったとはなァ」

いいおもちゃを見つけたと思った。
それから生徒会室に用があるたび、アイツをからかって。
俺のデコピンから逃げ惑って、捕まって。
そうやってアイツをからかうと、俺も年相応になったとばかりに楽しかった。
いつもはジジイたちと一緒に仕事をしたりしてるから、子供らしい遊びなんて全然できてなかったしな。

そんな「いいおもちゃ」だったあいつに、欲情したのはいつからだったか。



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