02


「おー千景だー」
「総長っ!!」

3人でいつものたまり場に入ると、おれと潮さんを見て先に中にいたチームの人らが寄ってくる。
そうして潮さんの上にいるちゆを見て、驚愕と言った風に目を見開く。

「いつの間にガキが……っ!?」
「相手は誰っすか!?前千景がいないときに連れてきた――」
「それ以上言ったら殺すぞ」

視線で人を殺せるってこういうことなんだな。
…ていうかおれが女といちゃついてるって勘違いしたときはあんなに切れたくせに、自分はいいのかよ。それって理不尽じゃね。

「つか誰がこんなでけえガキなんかいるかよ」
「ちゆは、にーにのっ!!」

今まで黙っていたちゆが、おれを見てにっこりと満開の花が咲くように笑う。
それだけで、すべてが浄化される気がする。
あーかわいい、ほんとにおれのちゆは。

「おいで、ちゆ」
「んー!」

すぐに両手を開いておれに体を預ける。
小さくて柔らかい大事なおれの妹を両手で受け止めると、ちゆがきゃっきゃと笑う。

「怖くないか?」
「うんっ!みんなね、いろんな色できれー!!」

おれとちゆの様子を唖然とした様子で見ていたチームの奴らが、ちゆの一言で照れ始める。
…そういや、金髪とか赤髪とか緑とか、奇抜な色ばっかだもんな。

「あの人は頭がきらきらなのー!」

それはスキンヘッドって言うんだぞ、ちゆ。



はじめましてっ、ちゆですっ!!
カウンター席の椅子に立って、ぺこりと挨拶すると、それだけで周りがでろでろになったのが分かった。

「よく挨拶できたねーちゆちゃんー」
「うんっにーにがね、きちんとあいさつできなきゃだめだぞって!」
「そうかー」

ほんとにでれでれじゃねえか。お前らあんなに血の気の多くてよく喧嘩しに行ってボコボコにしてんじゃねえか。それが今はなんだ。
………負けてられねえ。めらりとおれの中の何かが燃えた。
兄の特権だと、ちゆのほっぺにちゅーをしようとしたら、後ろから大きな手がおれの体を引く。

「ぅおっ」
「……ちい」

後ろを見るまでもない、潮さんだ。

そういえばあのあと、失言をした奴を連れてどっか行ってたな。まあ気にすることもなくちゆと戯れていたが。

「……あれは、昔の話だ」
「はあ」
「……もうここ最近は連れ込んでねえよ。安心しろ」

何に安心するべきなんだ、おれは。でも空気の読めるおれは、わけがわからずも頷いておいた。

「そういえば羽柴さんはいないんすか」
「あー?あいつはまたどっかで女と遊んでるわ」
「…そうすか」

おれが一番危険視していた男がいないと分かってほっとする。
見境もなく女だったら声をかける危険人物に、ちゆを近づけさせれるか。

「にーに、ココアいれてくれたのーおいしー」
「よかったな、ちゆ」
「うん!」

強面のマスターが特別に淹れてくれたらしい。この人もでれでれか。
潮さんはほっといてちゆと話していると、危惧していた危険人物が、やってきた。

「なーにこの状況ー」


…最悪だ。



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