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「もーもは帰って!」
「もーもじゃねえチビ」
「ちゆちっちゃくないも!!」

…またやってるよ。
潮さんがおれを送ってくれた時に、完璧にちゆに敵認定をされてしまったのか、あれからちゆは頻繁に家に来る潮さんを追い出そうと必死だ。
チームの総長だし、バカ強えし、失礼だろーがと思ったけど、幼稚園児にぶちぎれて手を出すような最低な男じゃないってのはおれもわかってる。
それになんだかんだ仲良しだし。

「ちーくんは入らなくていいのー?」
「なんでだよ」

ほわほわと母さんが傍観していたおれに声をかける。
いや、おれはここで二人を見てるよ。つーか口出しすることなんかねえし。

「じゃあお母さんが参加しちゃおっかな!」
「それこそなんでだよ」

母さんの思考回路はいまだについていけない。

「ていうか潮さん、なんで今日いるんですか…」
「あ?んなの、お前を迎えに来たに決まってんだろ」
「決まってないです…」

あれから潮さんに「チームには1週間に3回行けばいい」という約束をどうにか取り付けたのに、潮さんは無視してふつうに来る。
今日だって、もう3回行ったっつーのに、行くぞなんて無理やりおれの手を引いて連れ出そうとした。それは違うだろって抵抗したら、昼寝をしてたちゆが目を小さな手でこすりながらリビングから出てきて、

「!にーにをはなしてっ!!」

そう言って思い切りおれに抱きついてきて。そして冒頭に至る。


「あー埒が明かねえ……ちびも連れてくか…」
「ちょっ」

いらいらした様子でちゆを見下ろすと、そのままひょいと片手でちゆをすくいあげて自分の腕の中で抱きしめる。
それには我慢がならねえとおれが思わず声を上げると、何か問題でもあるのかと言った目で見られる。いやいやいやいや!!

「ちゆをチームに連れてく気っすか!?」
「おう。あいつらもガキには手出さねえよ」
「危ない目に合うかもしれないじゃないっすか…!」

血の気の多い集団だ、いつちゆが怪我するか分かんねえ。
大体ちゆだって嫌がるに決まってる…!
おれはちゆを離してもらおうと近づいたら、

「ちゆ行きたいー!!にーにがいっつもあそびに行ってるとこ!」
「おし、解決」

まじかよ。
まさかのちゆの裏切りに呆然とするおれをよそに、潮さんはちゆをひょいと肩車する。
それに無邪気に笑うちゆ。

「もーも高いー!!にーによりも高い!!」
「だろ」

にやりと不敵に笑う。どうせおれは潮さんよりはちっちぇよ…。
そうして空いた右手でおれの手をとり、繋ぐ。まさかの恋人つなぎ。
抵抗しようとしたら、「チビが落ちるだろ」…反論もできなかった。

「気を付けてねー!」

のんきに笑う母さんに全力で手を振りかえすちゆを連れて、異色のメンツでチームに行くことになった。






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