シーツに無理やり押し倒し、抵抗する日生を簡単にねじ伏せると、唇をこじ開け激しく舌を絡める。 「んっ…ふ、ぁ…」 「…ちゅ、くちゅ…」 飲み込まれることのない唾液が、口の端を伝って流れる。 無理矢理日生にこぼれそうになったそれを飲み込ませると、嫌々と首を振りながらも最後は観念したようにごくり、と喉が上下した。 それでも舌をしゃぶり、歯列をなぞり、今まで触れ合っていなかった期間を埋め尽くすように唇を合わす。 ようやく離したとき、唾液の糸が間を伝い、くてんと息を激しく乱した日生が横たわっていた。 「なんなんですかっ、いきなり来て…っ!!」 「日生がぜーんぜんメールも電話もくれなくなって、驚かせようと思って高校に来たら、お前、俺と自然消滅したって言ってたらしいじゃねえか」 「…それは…」 「お前は知らねえ奴と良い雰囲気出してるし、そりゃこっちとしちゃ腹も立つわな?お前がいるからどれだけいろんな奴に迫られてもなびかなかったのによぉ…」 「え…っ!?」 真っ赤な頬で文句を言われても、色気しか出てねえ。 数ヶ月離れただけで、日生も俺に言うようになったじゃねえか。 従順だった昔より、今の方が生意気で調教し甲斐があるけどな。 欲望を隠すようにわざと優しい顔をして、日生の頬に手をすべらせながら、 「もう俺はお前しか抱けねえんだよ。どうしてもって迫ってきた女がいたからフェラだけはさせてやったけど、お前じゃねえって思ったら勃たなかった」 被害者は俺だとばかりに、日生に植え付ける。 罪の意識を、俺の愛の深さを。 なあ、日生。 「嘘じゃねえよ?俺は大学行ってお前と別れてから、一切誰も抱いてねえ」 お前は人を傷つけてたんだよ。 離れてるから何をしてもいいって、勝手にふるまって。 それを償うのは当然だろ。 「ご、ごめんなさ…せんぱ…。でも、僕、もう…」 「離さねえよ?」 泣いたって、謝ったって、許してやらねえ。 離してもやらねえ。 「大学卒業するまでは自由にしてやろうと思ってたけど、やめた」 「…え?」 「たった3ヶ月離れただけで、すぐお前は男を誑かす。俺はお前が心配で仕方ねえよ」 「た、ぶらか…っ!」 「お前、そいつのとこ行こうとしてんだろ?」 「……はい…」 素直な日生は、俺の質問に嘘を吐くこともなく答える。それがどれだけ腹立たしいか、こいつはわかっていない。 俺がお前のためなら、あの男一人くらい消してもいいと思ってるとも知らないで。 「だからさ、もう日生を自由にしとくのはやめた」 「…え?」 「お前、俺の過去のこと気にしてんだろ?セフレのこととか、経験の差とかさ」 「…!?」 ばかばかしい。 過去なんて、消しようがねえんだよ。 どうして今を生きてるのに、わざわざ昔を懐古して悲しむんだこいつは。 「過去は消せねえから仕方ねえよ。俺がどんだけお前と出会う前の俺を殺そうと思っても、それは俺にも出来ねえ。―――だからこれからは、お前に俺の未来をやるよ」 「…?ど、ういうこと、…?」 「キスもセックスも全部お前としかしねえ。これから先、俺に触れていいのはお前だけだ。もちろんお前に触れていいのも俺だけ」 なあ、日生。 あの男は、お前にここまでの愛を伝えたか? お前はただ、自分自身が醜い存在にならないような相手を無意識に探して、いいと思ってるだけなんだよ。 「せんぱ、僕は、もう、紫先輩とは別れ…」 「―――なあ、日生」 あいつの名前を出してちょっと脅すだけで、ぴたりと止む抵抗が腹立たしい。 なあ日生、自由になりたいと請うならば、まずは俺の愛を受け止めてから、言ってみろ。 おわり なげえよ。 ← | top | → ×
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