06


そうして、食堂に着くと、案の定ミチが日生を連れてどこかに逃げようとしていた。
瀧に目配せをすると、走ってミチの元に駆け寄っていく。だけど夢中な二人はそれには気づかない。

「み、満っ!?どうしたのっっ!!?」
「紫先輩が来た!!!!」
「―――え……っ!?」
「日生(ひなせ)の魂胆に気づいたんだよっ!!日生が紫先輩と――っ」


「自然消滅を狙ってることも、どーやらイイ相手がいることも、なあ?」

その一言で、空気が凍った。
日生の隣にいるあの男が、横沢?
じっと観察すると、慌てたように目を逸らされた。意気地ねえ男。
それでも懸命に日生を逃がそうとするミチを、瀧が後ろから抱きついて動きを封じる。

「ちょっと瀧(たき)っ!離してよ!!」
「暴れんな!!…紫先輩、じゃあ、あとは二人でよろしくお願いします」
「なんで二人っきりにするの…っ!!!」
「良いから来い!!」

正しい判断だ、瀧。
笑いかけてやったのに、また真っ青に顔を染めてどこかに行っちまった。

「さーて日生(ひなせ)。邪魔者はいなくなったし来いよ」

努めて優しく呼びかけてやったのに、日生は後ずさるばかり。
笑いかけてるはずなのに、逃げるのはなんでだ、なあ日生?

「ひなっ!!」

そう考えたところで、胸糞悪い声。

「ゆ、うや、く……」

その声に手を伸ばそうとする、日生。



―――――ああ、切れた。



その手を絡め取る。手加減なしに掴んで俺の腕の中に閉じ込める。

「もう二度と日生に近づくな」


――――じゃないと俺は、お前を殺すよ。


声にならない声にも敏感に反応したクソ野郎は、顔をゆがめそれでもまっすぐ日生を見つめる。日生も俺が無理やり連れだす最後まで、見つめ合っていた。
なんて胸糞わりい光景だ。



そうして暫く無言で歩き、俺専用の部屋として今も使用されていない特別棟の一室に日生を連れ込む。
カードキーもパスワードも俺しか知らない、言うならば俺が作った「檻」。
そこに閉じ込めるとしたら、日生、お前しかいないだろ。









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