日生を離さないと決めてから、俺はがむしゃらに親の会社を引き継ぐための知識をつけるため、働いた。 毎日とっていた連絡もいつの間にかおろそかになった。 それでもいいと思った。 この期間を犠牲にすることで、日生の一生が手に入ると確信していたから。 日生も日生で、俺と自然消滅が出来たと友人に言っていたらしい。 俺の後釜で、その友人の恋人の瀧(たき)がそう俺に教えた。 すべて情報が筒抜けでわざと泳がせていることも知らずに、幸せそうな日生が憎かった。 憎い反面、とても可愛くて、どうしようもなかった。 「最近、塚原にちょっかいかける男が現れたみたいですよ」 「……あ?」 「―――横沢佑弥(よこざわ・ゆうや)、日生と同じクラスの男です」 そうしてたった数ヶ月離れるだけで、もう俺の日生は他の男をたぶらかす。 1年も自由にしようとしていた自分が恐ろしい。 そういう点では、日生が馬鹿でよかった。 俺の計画の綻びが分かったから。 「瀧、」 「はい」 「――お前の恋人と、仲良くな?」 「―――っ…はい」 脅しをかける。 いくらお前の恋人が日生の味方だからって、俺の邪魔をするようなら容赦はしないと。 「日生……」 お前がいねえ毎日は、クソみてえだよ。 言い寄ってくる女もかたっぱしから喰ってやろうと思ったけど、それはやめた。 イライラしてるけれど、それは「浮気」になっちまうからな。 ただフェラはさせたけど、日生がそれを悲しむ権利はねえよな? お前はクソ野郎と仲良くやってんだしなあ。 「大人しくしとけばよかったのになァ、日生」 馬鹿で愚かで、どうしようもなく愛おしい。 「この仕事が片付いたら、すぐ行くからな」 それまでせいぜい楽しんどけ。 ← | top | → ×
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