04


日生を離さないと決めてから、俺はがむしゃらに親の会社を引き継ぐための知識をつけるため、働いた。
毎日とっていた連絡もいつの間にかおろそかになった。
それでもいいと思った。
この期間を犠牲にすることで、日生の一生が手に入ると確信していたから。
日生も日生で、俺と自然消滅が出来たと友人に言っていたらしい。
俺の後釜で、その友人の恋人の瀧(たき)がそう俺に教えた。
すべて情報が筒抜けでわざと泳がせていることも知らずに、幸せそうな日生が憎かった。
憎い反面、とても可愛くて、どうしようもなかった。


「最近、塚原にちょっかいかける男が現れたみたいですよ」
「……あ?」
「―――横沢佑弥(よこざわ・ゆうや)、日生と同じクラスの男です」


そうしてたった数ヶ月離れるだけで、もう俺の日生は他の男をたぶらかす。
1年も自由にしようとしていた自分が恐ろしい。
そういう点では、日生が馬鹿でよかった。
俺の計画の綻びが分かったから。

「瀧、」
「はい」
「――お前の恋人と、仲良くな?」
「―――っ…はい」


脅しをかける。
いくらお前の恋人が日生の味方だからって、俺の邪魔をするようなら容赦はしないと。

「日生……」


お前がいねえ毎日は、クソみてえだよ。
言い寄ってくる女もかたっぱしから喰ってやろうと思ったけど、それはやめた。
イライラしてるけれど、それは「浮気」になっちまうからな。
ただフェラはさせたけど、日生がそれを悲しむ権利はねえよな?
お前はクソ野郎と仲良くやってんだしなあ。

「大人しくしとけばよかったのになァ、日生」

馬鹿で愚かで、どうしようもなく愛おしい。


「この仕事が片付いたら、すぐ行くからな」


それまでせいぜい楽しんどけ。




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