ああ、嫉妬してんのか。 気づくのにそう時間はかからなかった。 知った時、胸にこみ上げるのは愛しさと昂揚感しかなかった。 日生以外はもう抱いてもいねえし、デートなんかもしたことがねえ。 俺があいつを抱くときも、喘ぐのに顔は泣きそうになっている。 服を脱がすときの手際のよさや、キスの舌の絡め方ひとつひとつにも、敏感に反応するからだ。 気にしすぎていると思ったが、それも俺を思っているが故だとなると、愛おしさの方が勝った。 高校を卒業するとき。 付属の大学と言っても、今みたいに寮から通うことはできないから大学近くに部屋を借りた。日生には当然鍵は渡しておいた。 最後の別れでもねえのに、涙をぽろぽろ流す。 こんな涙もろい奴だったか、そう思ったとき、はっと気づいた。 ――――こいつは、俺から離れようとしている。 そう気づいたとき、俺はぜってえに離さないという言葉を吐く。 「永遠の別れじゃねえし、泣くなよ」 「……っ」 「な」 返事は返ってこなかった。だが、下手な嘘は聞きたくない。 塞ぎ込むように、牽制の意味も込めて、俺は日生の唇を塞いだ。周りに植え付けてやる。お前が俺から離れようとしても、この光景は何百人の頭の中に刻まれたはずだ。 「さようなら、紫先輩」 ―――こいつにとっては、覚悟の別れだというわけか。 まあそんなこと、俺がさせるわけはない。 日生が大学に入学するまでの1年間、自由にしてやろうと思ったが、やめた。 俺がいなくなるというだけで、すぐに忘れようとする。 自分を守るために、俺を切り捨てようとする。 ――――ばかな日生。 「俺がお前を離すわけねえだろ」 馬鹿すぎて、たまに殺したくなるよ。 ← | top | → ×
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