03


真白のことをいつから好きだったとか、もうそんなことは憶えていない。
会計時代の俺は相当荒れていて。なんであんなにむしゃくしゃしていたのかは分からないけれど、毎日がつまらなくて仕方なかった。書記だった呉哉もおんなじような心境だったらしく、そのことがきっかけで親睦を深めていった。


「白雪姫」が入学してきた。
そう噂が広まった時は、「姫」と呼ばれるような男なんだから、女みてえになよなよした男オンナか、そういうもんだと思ってた。俺はそういう男は大嫌いだし、男同士の恋愛なんてぜってー無理だったし嫌悪感しかなかったから、「白雪姫」の噂が耳に入った当初はまったく興味なんて沸かなかった。


だけど


「お、あれが噂の白雪姫じゃん。一緒にいるのはいばら姫か。俺はいばら姫ちゃんのがタイプだわー」
「あー?男だろ…」

呉哉と廊下を歩いているとき、からかい気味に反対方向から歩いてくる二人組を指差した。
黒髪の男と、ふわふわの茶髪のちっこい男が楽しそうに話しながらこっちに向かってくる。
呉哉は男も女も気に入ったらすぐ手出すからなぁ。いばら姫かわいそ。そう思いながら通り過ぎようとしたとき。

ふいに、目が合った。


――――――電撃が走る感覚。
白雪姫と称されても納得できる、整った顔立ち。見た目はクールそうなのに、笑ったら無邪気でむちゃくちゃ可愛いとか。

「おーどした響汰。真っ赤になっちゃって」
「……顔が可愛かったら男でもいいのか俺…」

思わずその場でうずくまる。
男にときめいた自分が信じられなかった。



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