03


姉たちが風紀委員長×という夢から覚めたおかげで、苦手、というか言い過ぎたと反省している相手にさらに喧嘩を吹っ掛けることをしなくて済むと、すっきりした頭で起き上がる。

「年上なのに暴言ばっか吐いちゃったしなー」

俺様生徒会長は風紀委員長と仲が悪い。けどそこから愛が生まれるのがいいのよねー!なんて興奮ぎみに話していた、遠い日の姉たちの会話。

「まあ、実際俺様生徒会長の方が、仕事の指図とかしやすいし…」

任期が終わるまでは、生徒会の中ではこのキャラで行こう。
あと3か月ほどだし。我慢できる範囲内だ。
それからはもう生徒会長は立候補もしないし、推薦されても拒否する。徐々に自分を出していけばいい。
現に今、おれの本当の性格を知っている人も数人いるし。姉さんの考えに笑って協力してくれる友達の一人が言う。

「二重生活みたいで楽しくね?」
「そーかな」
「うん。てかギャップ萌えだね!違いすぎだろ!」

そーんなとこも可愛いけど!
ぎゅーとおれよりも小柄な、おれの親衛隊長が抱きしめてくる。
それに笑って「じゃあ精一杯楽しむ」とおれも抱きしめ返した。

生徒会室に向かう廊下で、曲がり角から現れた人物に思い切り動揺する。

「おーおー、会長サンじゃねえか」
「……」
「相変わらず生意気だなァ。まあそんなとこもいーけど」

一ノ瀬がにやにやと思い切り人を馬鹿にした顔で、蓮にそう言う。
いつもなら俺様だからと一生懸命返していたけれど、姉さんから許しが出たからいいや。

「…うるせー」

のこのこ引っ込むのは男のプライドとしてどうだろうと、そう一言悪態をついてその場から去ろうとする。
それに意外だといつもと反応が違う蓮に目を見開くと、横を通り過ぎる蓮の腕をつかむ。

「おい、いつもの威勢はどーしたよ?」
「……離せクソヤロー」
「なんだそれ」

興醒めだ、とばかりにため息をつく一ノ瀬。

「俺はいつもみてえに威勢のいい蓮チャンが好きなんだけどなー」

――――それはもう一生見えないよ、一ノ瀬センパイに対しては。
そう心の中で思うけれど、言ったらきっと理由を問われるし、そうしたらこれまでが全て水の泡になる。

「そーかよ」
「そーなの」
「お前なんかに好かれなくても別にいい」

ふい、と顔をそむける。
これは本音だ。蓮が言いたいことを言えた、とすっきりした顔でまた歩みを進めようとすると。

「ははっ、ジョーダンジョーダン」

ぐいっと腕を引かれ、近くの誰も寄り付かない資料室に押し込められる。



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