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「はあー…もうダメダメだったなぁ今日も…」

一日を振り返り、自室で今日の反省会をする真見(さなみ)。
役職持ちの特権で一人部屋だけど、基本個人行動が嫌いな真見の部屋にはたくさんのぬいぐるみが置いてある。
今もお気に入りのテディベアのベティに向かって一人反省会を行っている最中である。

「会長、誰にでもああいうことするのかなあ…」

いろんな人に聞いてみるけれど、みんな自分から目を逸らしちゃう。
それに不安を覚えて、「もしかして会長、付き合ってる人とかいるの…?」と聞いてみたら、「付き合ってる人はいません」って答えが返ってきた。

「付き合ってる人『は』ってことは、すきなひと、はいるの…?」
「……」

なぜか驚愕に目を見開かせおれのことをみんなじっと見つめてきたけど、何が言いたいのか結局わかんなかった。

真見と静間(しずま)が付き合っていると最近まで勘違いしていた一般生徒は多い。静間の片思いということが知れてからは、驚きの声があちらこちらから挙がった。
生徒会室に来ればまだ付き合っていないということはわかるだろうけど、あいにく生徒会室がある階は一般生徒は基本立ち入り禁止なのだ。
それでも食堂で見る二人の仲睦まじい様子や、静間の真見にしか見せない甘い表情に、お二人は付き合っていると囁かれていたが、まさか違うとは…。
そしてあんなにもラブラブさを見せつけていられたのに、真見様が気づいていないとは…。真見の鈍感さと天然さも同時にあらわになった事件だった。

「もっとしっかりしないと…嫌われちゃうかも…」

そうだ。
あんなふうに何回も呼びつけて会長の仕事を中断させてちゃ、だめだよね。

「よぉし、がんばろー!」

ベティの右手を自分で動かし、おーっ!と気合を入れた。
それ自体が間違った方向に頑張っているとは真見が気づくはずもなく。
会長断ち、という静間が聞いたら怒るようなことを真見は計画していた。


「うわああんまただー!!動かないよぉおっ!!」

気合を入れても生粋の機械音痴が治るはずもなく。
また今日も真見は生徒会室で悲鳴をあげていた。

「かい、」

いつもの癖で会長と呼ぼうとしたとき、昨日の決意を思い出す。
ちらりと会長を見ると、真剣に書類に書き込み作業をしている。まわりを見渡すと、ばちりと副会長と目があった。

「ふくかいちょー!!助けてー!!」
「え、私ですか…っ!?!?」

想定外というように驚き、勢いよく静間を見る副会長。
静間自身も目を丸くして驚いている。

「ここ!!止まっちゃって!!」

呼ばれたからには行くしかない、と副会長は後ろから殺気を感じながらも真見のところに向かって行く。

「会長、さなみんと喧嘩したの…?」
「…理由は、俺が知りたい」

うわあんわけわかんないよさなみーん!!
声にならない悲鳴を、庶務と書記は同時に心の中であげた。


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