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日向蓮(ひゅうが・れん)は、生徒会会長として学園の代表である職務を全うしている。
身長は175pと平均より高いが、生徒会の中では美少女顔の書記に次ぐ低身長。だが、「会長」としての威厳と持って生まれたカリスマオーラで、親衛隊の規模も学園一、熱狂的なファンを多く従える男である。

男前というよりは美形、もともと色素が薄いため異国の王子様のようだが、口を開けば
上から目線の言葉ばかり。

「おい、この書類まだ提出してないのか」
「あー忘れてたよカイチョー」
「死ぬ気で作れ。今日までにな」
「ええー!?」

ただでさえ生徒がこなす量とは思えないほどの書類を処理している中、不備が出ても容赦なく追加させる。

「過労死しちゃうよー」
「うるせえ。口動かしてねえではやくやれ」

会計の泣き言もさらりと無視する非情さ。

「コーヒー」
「…嫌ですよなんで僕が」
「お前の淹れるのがうまいから」
「…べ、別に褒められて嬉しいんじゃないんですからねっ」

副会長に命令し一度は断られるも、計算していない褒め言葉で見事に動かす。

「俺様で」
「天然たらしって」
「…最強、」

こそこそと話し合う残りの生徒会メンバーの意見が全員合致したところで、会長に一喝されまた自分の仕事に戻った。



「あー疲れた…」

終わらなかった仕事は各自部屋でやるように命令し、一人生徒会室に残る蓮。
首を左右にかしげると、ゴキゴキと鳴る。それに「あー」とおっさんくさい声を出し、パソコンとまた向き合う。
だが今度は何かをせわしなく打ち込むということはせず、ただひたすら画面を見続けている。そしておもむろに引出からマイク着きのヘッドセットを取り装着する。


そしてそのあと。


「…ぐずっ…ぅ」
『もう蓮ちゃん!泣かないの!せっかく俺様生徒会長なんて素敵な役職に就けたんだから!』
「お、俺様なんかついてない…」


まさかのskype。
その相手は


『蓮ちゃん。気を確かに。あなたは俺様生徒会長。誰も見てないとは言え、ここは学園よ!びーびー泣かないの!』
「びーびーなんか泣いてない…。大体おれは俺様じゃないのに…今日だって酷いことばっか言っちゃったよ…」
『いいのよ!』
「よくないよー…っ大体姉ちゃんが変なこと言うから…っ」

実の姉であった。
しかも一人だけではなく、後ろで早く変わって変わってと騒ぐ2人の姉がいる。
―――所詮「腐女子」という彼女たち。ただ王道通りの俺様会長が見たいがために立候補する気がなかった会長に無理やり就任させるという自己中の塊である。
だけど同時に、3人とも蓮が大好きだという大層なブラコンぶりであるため、よく小説に登場するような王道展開は興味がない。

―――脇役受けも好きだけど、そうしたら蓮ちゃんが一人で仕事することになっちゃうし。そんなことしたら蓮ちゃん倒れちゃうもの。そんなの駄目よ!
―――会長受けも好きよ!俺様だとなおさら!でも無理やりとか愛のないのなんかだめ!
―――総受け?だめよ!蓮ちゃんが疲れちゃう!やっぱり一人の人にじっくり愛されて幸せな蓮ちゃんが見たいもの!


『ということでわたしたち、風紀委員長がいいと思うの!』
「や、やだよっ!!一ノ瀬センパイは絶対やだ!!」
『なんでよー。ちょっと下半身がだらしないのは珠にキズだけど、浮気したらちょんぎればいいじゃない』
「それはだめだよ…」

ぶーぶーと不満たっぷりの姉たちを無視し、蓮は風紀委員長でもあるセンパイの一ノ瀬紅(いちのせ・こう)を思い返す。



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