04


「どうしてって顔してんなァ」
「ごほっ、ぇほっ」
「ミチは昔っから、すーぐ顔に出んだよ…」

だから俺のことが好きだって、すーぐ分かった。
優しくして告白させて、それから俺から離れないように調教するつもりだったのに。

「え…なに、ちょうきょ…?」
「ミチの前では爽やかな好青年演じてたけど、それはぜーんぶ、お前を手に入れるための計算。本当の俺は、今。どっちもいい男だろ」
「―――っ」

頬杖をつきながら、視線はそらさずにまっすぐおれを見続ける。射抜くように。

「や…」
「なー。西村サンとはどこまでヤった?」
「…っ!?」
「最後まで?キスどまり?―――それとも、気持ちすら伝えてねえ?」

ぎくり、と考える前に体が反応してしまった。
それに面白そうにへえーと笑う声が聞こえる。

「センパ―――」
「なんだ、じゃあ簡単だな」

俺が今日、お前をこのあと無理やりモノにすればいいってことか。

そう悪びれもなく言うから。

「―――わか、りました」
「おー、話が早くてよかった」
「…謝ります。おれ。センパイに何も言わずに逃げたのは、おれじゃセンパイと不釣り合いだって思ったからです」
「…あ?」

いきなし謝り始めたおれに、怪訝な反応を見せる雅也センパイ。
逃げる準備はできている。俯きながらここまで来た道のりを頭の中で辿り、どの出口でどの階で帰れば逃げれるか、逃走経路を頭の中で描きながら話す。

「おれは、今日センパイに着いてきたのは、よりを戻すためでも抱かれるためでもありません。…終わらせようと思って、来ました」
「…」
「別れ話をしてなかったのを思い出しました。おれが黙って出てきちゃったから…。だからセンパイ、ずっとおれのこと気がかりだったんだと思います。逃げられるなんて思ってなかったから…」

たどたどしくも、自分の考えを言う。
センパイの反応は怖くて見れなかった。
そのとき、ポケットの中で震える携帯。

―――これ幸い、とばかりに、電話だからと席を立って逃げようとしたとき。

「――――で。それで終わりか?」
「――え」
「黙って聞いてりゃ、一人で突っ走りやがって…」

立ち上がろうとしたそのとき、タイミング悪くセンパイからの声がかかる。
センパイの方を見ると、じっとおれの方を見ていて。



「誰が逃げられたから気にかかってるって言った?誰が別れ話を聞きたいなんて言った?――――誰がお前を逃がすって言った?」


別れ話をさせに来たんじゃねえ。



「俺は、お前を取り戻しに来たんだ」


今度は、逃げれねえように、雁字搦めに縛って愛でてやるよ。


――――そうだ。センパイ。
あのときと違うって、真っ先に思った理由。
ギラギラと目が獰猛で、最初に会ったときからずっと、目が笑ってなかったんだ―――。


立ち上がってその場から逃げる。
センパイは追いかけてこなかった。
だけど警告音は鳴り止まず、いつまでもいつまでも、おれの頭の中で響いていた。



おわり


不吉!!!ホラーエンド!!
強気感がだせませんでした…無念…。



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