「どうしてって顔してんなァ」 「ごほっ、ぇほっ」 「ミチは昔っから、すーぐ顔に出んだよ…」 だから俺のことが好きだって、すーぐ分かった。 優しくして告白させて、それから俺から離れないように調教するつもりだったのに。 「え…なに、ちょうきょ…?」 「ミチの前では爽やかな好青年演じてたけど、それはぜーんぶ、お前を手に入れるための計算。本当の俺は、今。どっちもいい男だろ」 「―――っ」 頬杖をつきながら、視線はそらさずにまっすぐおれを見続ける。射抜くように。 「や…」 「なー。西村サンとはどこまでヤった?」 「…っ!?」 「最後まで?キスどまり?―――それとも、気持ちすら伝えてねえ?」 ぎくり、と考える前に体が反応してしまった。 それに面白そうにへえーと笑う声が聞こえる。 「センパ―――」 「なんだ、じゃあ簡単だな」 俺が今日、お前をこのあと無理やりモノにすればいいってことか。 そう悪びれもなく言うから。 「―――わか、りました」 「おー、話が早くてよかった」 「…謝ります。おれ。センパイに何も言わずに逃げたのは、おれじゃセンパイと不釣り合いだって思ったからです」 「…あ?」 いきなし謝り始めたおれに、怪訝な反応を見せる雅也センパイ。 逃げる準備はできている。俯きながらここまで来た道のりを頭の中で辿り、どの出口でどの階で帰れば逃げれるか、逃走経路を頭の中で描きながら話す。 「おれは、今日センパイに着いてきたのは、よりを戻すためでも抱かれるためでもありません。…終わらせようと思って、来ました」 「…」 「別れ話をしてなかったのを思い出しました。おれが黙って出てきちゃったから…。だからセンパイ、ずっとおれのこと気がかりだったんだと思います。逃げられるなんて思ってなかったから…」 たどたどしくも、自分の考えを言う。 センパイの反応は怖くて見れなかった。 そのとき、ポケットの中で震える携帯。 ―――これ幸い、とばかりに、電話だからと席を立って逃げようとしたとき。 「――――で。それで終わりか?」 「――え」 「黙って聞いてりゃ、一人で突っ走りやがって…」 立ち上がろうとしたそのとき、タイミング悪くセンパイからの声がかかる。 センパイの方を見ると、じっとおれの方を見ていて。 「誰が逃げられたから気にかかってるって言った?誰が別れ話を聞きたいなんて言った?――――誰がお前を逃がすって言った?」 別れ話をさせに来たんじゃねえ。 「俺は、お前を取り戻しに来たんだ」 今度は、逃げれねえように、雁字搦めに縛って愛でてやるよ。 ――――そうだ。センパイ。 あのときと違うって、真っ先に思った理由。 ギラギラと目が獰猛で、最初に会ったときからずっと、目が笑ってなかったんだ―――。 立ち上がってその場から逃げる。 センパイは追いかけてこなかった。 だけど警告音は鳴り止まず、いつまでもいつまでも、おれの頭の中で響いていた。 おわり 不吉!!!ホラーエンド!! 強気感がだせませんでした…無念…。 ← | top | → ×
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