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「かいちょおーっ!!なんか変な文字でてきたーっっ!!」
「またか?」
「うう、またです…」

えーん、と栗色のふわふわの髪の毛を揺らし、半泣きで動かなくなったパソコンの前であたふたとする会計の真見(さなみ)。その声に呼ばれた会長の静間(しずま)は、さらりと黒髪を揺らし視線を上に上げ仕事を切り上げ、真見の元に歩いていく。マウスの上に手を乗せていろいろぐるぐるとマウスポインタを動かしている真見をたしなめるようにそっとその上に自分の手のひらを重ね操作する。
真見の機械音痴っぷりは周知の事実だったので、また壊したか、と会長以下の役職の皆はもはや恒例になった光景に目をやることもなく、各自仕事をこなしていく。

「どれ?」
「ここー…」
「お前機械苦手なんだから変なとこいじるなっていつも言ってるだろ?」
「うう…だって押したくなっちゃうんだもん…」

優しくたしなめられ、可愛く唇を尖らせもごもごと言い訳をする真見。

「なんだお前、ちゅうしてほしいのか」
「ふえ」

ちゅっ、と尖らせた唇に軽く響くリップ音。
やっぱり出たよ…。
げんなりとその様子を見てはいないけれど真見の慌てふためきようで気づいた副会長、書記、庶務が甘い雰囲気にあてられたようにげっそりとする。
近すぎだよという距離で作業をし、最後に何かと理由をつけ唇を奪う。これがもう一つの恒例だった。

「ちょ、かいちょ…!!」
「はは、奪っちゃったーだな」

爽やかに某お茶のCMの言葉を笑いながら言うと、ぱふ、と真見の柔らかな栗色の髪の毛を撫で、また席に戻って行った。


「…会長、みんなにこういうことしてるのかなぁ…」

いやいやいや!!!
お前にだけだよ!!!
周りから見れば一目瞭然なのに、全く気付かない鈍感な真見と、そんな真見すらすべて愛おしいという目で見つめている静間。
真剣に悩んでいる真見を今も可愛い奴だと愛でている。その視線に対しても全く気付かない。

「はあ…はやくくっついてほしい…」

そうしたら僕たちだって遠慮なく二人きりにできるのに。
いちいち理由つけて空気読んで退室するのめんどくさいんだよー。
それが真見と静間以外の生徒会役員が思う理由だった。

「か、かいちょおおお!!今度はフリーズしたよぉ〜〜〜!!!」
「あー、慌てんな落ち着け」

…いったいそんな日は、いつになるのだろうか。



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