02


「―――おい、お前!!」

ほら、やっぱり悪い予感は当たるもんだね。


特別棟にある理事長室に向かっている途中。生徒会と風紀しか入れない、一般生徒立ち入り禁止の場所だから、なんとなくやばいなーとは思ったんだよね。

腕を掴まれて、後ろを問答無用で振り向かされた。
痛みで顔をゆがめるのもお構いなしに、さらに力をこめて掴んでくる。

「…カイチョウ」
「お前のせいで、俺は会長職を下ろされた――っ」
「おれのせいじゃなくて、」
「――」
「あんな転校生に夢中になって、仕事をしなくなった自分たちが悪いじゃん。都合よく全部おれのせいにしないでよ」
「んだとテメエ――」
「離してよ、元カイチョウ」
「−−−−!!」

しまった。完璧に怒らせちゃった。
僕の欠点。さらに火に油を注ぐことを言っちゃうこと。
このことは前、ダーリンに言われたなあ。すぐ直すってゆったのに、全然直せなかった。ていうか直す気がなかった。嘘ついたバチが当たったんだ。

1回くらい殴られるのは、許容範囲。
顔にキズつくらない配慮というか悪知恵は働くのか、前はお腹とか見えない部分を集中的にやられたけど、今日は相当頭に血が上ってるのか。
そういう考えにも頭が回らずに、普通に頬を殴られた。痛い。

「…校内で暴力事件なんておこして良い訳?」
「うるせえ!!!」

だめだ、学習能力がないおれ。
また殴られそうだったから、今度はおれも反撃してやろうと、男の急所を蹴りあげようと思い切り足を振り上げた。

そのとき。



「―――クソガキ、殺すぞ」

漫画みたいに、絶妙なタイミングで。
王子様はやってくるんだよ、やっぱりね。

「ダーリン!!!!」
「…クソ理事長……っ」
「ハニーに手を出すのはお門違いじゃないのか?そんなことにも頭が回らないとは、転校生が来なくても遅かれ早かれリコールされていただろうな」
「テメェ―――っ!!」

ふわりと抱き寄せられる。大好きなコロンの香り。

「とりあえずこのことは全部そこに設置してある監視カメラに映っているだろうし、あとで話し合おうか。――ご両親も交えて」

親を出すと、とたんに黙りこくった会長。
だけどおれは同情なんてしないよ。だって自業自得だもの。

「…総ちゃん」
「湊。…おいで」

総ちゃんに手を引かれるまま理事長室に向かう。
後ろは振り向かなかった。




- 28 -

top

×
- ナノ -