02


ぱちり、と変な幸福感と共に目を覚ましたチロが一番最初に見たものは、となりですーすーと気持ちよさそうに眠っている黒崎の姿だった。

「!?!?!!?ぃたっ」

パニックになり体を起こそうとしたけれど、下半身の怠さと鈍い痛みに、そのままベッドに逆戻り。その刺激によってすべてを思い出したチロは、今度は真っ赤になって顔を黒崎の胸にうずめた。

(うわあ……僕、センセと…うわあぁああ…)

なにしろこういう行為に疎いチロ。男同士のヤり方についても無理やり架月や井上たちにレクチャーされ、最近知ったばかり。

(センセは…初めてじゃないよね…)

男らしく整った顔立ちの黒崎。今はそういう噂は聞かないにしても、昔は分からない。きっといろんな人にモテてただろうなあ。そう考えると、寂しい。
なんだか切ない気持ちになったチロは、きゅうとまた黒崎に抱きつく。

(僕と、付き合ってるんだもん……)

それを独占欲とはチロは気づかない。だけど、そう自分に言うことでなんだか胸がすっとした気がする。
ふと自分の姿を横に立てかけてある姿見で見ると、

「な、なにこれ…」

ベッドから見えている上半身だけでも、いたるところに黒崎がつけたキスマークが咲いていた。
あんぐりとその姿に口を開け驚くチロ。

「まっかっかだぁ……」

そういえば、いっぱいいろんなところ吸われたような…。
そこまで考えてあまりにも鮮明に情事を思い出してしまったため、ぼん、と真っ赤になる。
そうしてもぞもぞとまた布団にもぐる。定位置のように黒崎の胸元に無意識に顔を寄せたチロがふと上を向くと、無防備にさらされた黒崎の首があった。

(…僕も、)

変ないたずら心がむくむくと湧いてきたチロ。
キスマークは、独占欲のしるしだよ!架月にそう力説されたことを思い出し、自分の体にたくさんつけられた愛のあかしに胸がぽかぽかするチロ。

(どくせん、よく…)

「どこにも、行かないでね…」

願いにも似た独り言を零し、ちゅう、と首に吸い付く。起こさないように手加減していたせいか、薄くしか色づかなかったそれに、むうと頬を膨らます。

「どーやってつけるんだろ…」

もう一度チャレンジしようと唇を寄せたとき。

「もっと強く吸えよ」
「―――――っ!?!?」

聞こえないはずの声に、思わず顔を見ると、いつもより髪を乱した黒崎が、にやりと笑っていた。




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