01


教室から連れ去られたあのあと。
はじめてだから、と強張るチロに優しいキスを落とし、甘い言葉と時々意地悪な言葉を両方言いながらも、ゆっくりと抱いた黒崎。
昼間だから恥ずかしい、とか言って逃げ回るチロに強引にキスをしふにゃんと溶けさせたあと、カーテンも電気も消してすべての光を奪った。
これで大丈夫だろ?と黒崎が念を押して、ようやく大人しくなったチロ。
(まあ、見えるけど)
ぼんやりと暗くなった程度で、チロの体や顔もすべてが黒崎に映る。
焼きつけようと無意識のうちにチロを見つめていたらしく、「ぼ、僕はどうすればいいの…っ」と半泣きになって助けを求めるチロの声には笑った。

今までに、何度も何度も衝動的に押し倒して最後までしようと理性が切れそうになったこともあった。だけど、それも我慢してよかった。
チロが泣くとか、悲しむとか。そういう理由もいっぱいあるけど。

(―――――融けそう、だ)

久しぶりの熱さと気持ちよさに、眉をひそめる黒崎。チロに出会う前にはほどほどに経験があった黒崎だが、チロに一目惚れしてからは自重するように禁欲をしていた。自分の気持ちが本物だと、どこかでチロに示そうとしていたのかもしれない。
だからこその気持ちよさに出た表情を、痛みをこらえている勘違いしたチロが、自分もつらいのに、涙目になっているのに。それでも懸命に黒崎の首に手をまわすと、ちゅうとキスを落とす。

「…いた、い?」
「……痛くねえよ。千紘は?」
「…だい、じょぶ…」

ふわり、と笑った拍子に涙がつうとチロの頬を伝った。
その光景が、ほ(涙が出そうだ)なんて、永遠に浸かっていたい幸福感と満足感に、黒崎は包まれた気がした。
それも全部、こうして「恋人」になったから。
恋人同士でするこの行為は、なんて温かいのだろう。

「――――千紘」
「…ん、ぅ、な、にぃ…っ」
「………愛してる」

「…僕も、誉さんのこと…っ」

愛してるよ、声にならない声で呟かれた一言。
その言葉にこらえきれずに熱を出すと、安堵するようにチロはふっと気を失った。

「………あー、がっつき、すぎたか…?」

本当にいとしい人とするセックスは、こんなにも気持ちよくて、幸せなのだ。
昔は相当遊んでいた友人が、特別な相手が出来たときにぽそりと零した言葉を、今、理解した。

「……可愛いな、お前はほんと」

ちゅう、と髪をかき分けおでこにキスを落とし、後処理をしてから黒崎も隣で眠った。
熱を求めるように黒崎に抱きついてきたチロを、しっかりと抱きしめながら。


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