03


「――――――雲谷」

あの後、木南が向かった先は屋上だった。
慣れた手つきで施錠してあるドアの鍵を開けると、中で不貞腐れたように寝転んでいる雲谷の姿を見つけた。

「……まだ雲谷?」

その言葉に髪をがしがしと掻くと、誰もいないことを確認するように後ろを振り向くと

「―――透」
「……ヒロ」

学園では決して呼ぶことない呼び方で、雲谷を呼ぶ。
寝転びながらぽむぽむ、と自分の横をたたくと、苦笑しながらも木南が近づき、同じように寝転ぶ。
そうするとすぐさまぎゅううと力強く抱きしめられる。

「もーヒロ、そろそろばらしちゃおーよ…」
「嫌だ。絶対面倒なことになるだろ。現に今でも絡まれるんだ、付き合ってることを公にしたらどーなるか…」

――――雲谷透と木南宏哉は、付き合って2年半経過した今でもお互いを思いあう、相思相愛のカップルであった。

「ヒロがそんなこと言わなかったら、今頃人前でもいちゃいちゃできたのに」
「いいだろ、別に」

誤魔化すようにキスを落とされ、不満そうな顔の雲谷。

「なに透、おれからのキスが不満なわけ?」
「そんなわけねえだろ」

そういうと舌を思い切り入れられる。

「ん…、ぁふ…」
「…ちゅ…」

熱烈なキスをかわしながら、徐々に手を下に下げると、シャツの裾から木南の胸に手を這わせる雲谷。それに気づいた木南がぱちんとその手をはたくと、しぶしぶと出て行った。

「…っは、外は嫌だっていつも言ってんだろ…っ」
「だってさぁ」
「だってじゃねえよ」

肌蹴たシャツを直しぐちぐちと文句を言う木南。

「つか付き合ってんのは隠そうってゆったけど、何も仲悪いフリをしろとは言ってねえぞおれは」
「だってヒロが眼鏡越しに睨む顔、超絶色っぽいんだもん。あれだけで抜ける」
「くそ変態」

2年半たった今でも出る文句に、同じ言い訳をする。
当たり前の日常が、こんなにも幸せ。

「つかお前、なんでさっき先輩殴ろうとしてたんだよ」
「あいつら、ヒロを強姦しようって計画してたから」
「……まじか」
「でももう大丈夫だよ、色々言っといたから」
「…そうか」

うん、と腹筋だけで起き上がる雲谷。
先に立ち上がった雲谷に手を伸ばすと、「女王様だなヒロはやっぱ」と笑顔で手を引かれる。

「……透」
「ん?」
「今日は眼鏡つけてセックスさせてやってもいいぞ」
「まじで!?」
「ああ」
「じゃあその顔にがん「殺すぞ」……はい」

ちっ、と舌打ちをし本気で悔しがる雲谷。それを見て苦笑する木南。

「仕方ねえな、……すぐにイかせてやるよ」

そう女王様たっぷりの態度で、雲谷の要望に許可を出す。
一瞬何を言われたかわからないと目を瞬かせる雲谷だったが、やがて脳にその内容が到達すると、嬉しくてたまらないといったようにまた木南に熱烈なキスをした。

――――ヒロ以外の奴は、ぜーんぶ駄目だけど。

あのとき、廊下で囁かれた言葉が、まだ熱を持っていた。

((あー、愛してる))


end

なんか雲谷が普通に小学生みたいないじめっこになってしまった。
木南も女王だし…あれれー?
下ネタはさんでいいかわからなかったので、直接的な言葉は自重しました。




- 18 -

top | →

×
- ナノ -