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そんな二人の仲の悪さは、学園中でも有名である。
木南が廊下を歩いていれば、こそこそと雲谷に憧れているチワワに陰口を叩かれ、反対に美人でしっかりとした木南に好感を持っている上級生に、雲谷は睨まれる。

そのときも、同じように陰口をこそこそと、でも聞こえるようにちらちらとこちらを見ながら言ってくる陰湿なチワワに木南がため息を吐いたとき。

「なに、お前超嫌われてんじゃん」
「…誰のせいだと」

ニヤニヤと楽しそうに木南の前に現れる雲谷。
それにまたため息を吐くと、突然の雲谷の介入にきゃあああと男とは思えない悲鳴を上げて興奮するチワワたち。

「どうにかしろよあいつら。お前のファンがおれが気に食わないらしいんだけど」
「もっとやればー?」
「死ね」

にたにたと更に助長するようなセリフを吐く雲谷に、今度こそ呆れた木南がもう無視しようと足を進める。

「でも、そーやって女々しいことやる奴俺は大嫌いだけど」

後押しをされてきゃあきゃあと喜んでいたチワワの顔が、一斉に停まった。
思いもよらない言葉に、木南どころか廊下で様子をうかがっていたすべての生徒の動きが止まる。

「意外だな、お前ああいうタイプ好きだと思ってた」
「はー?俺男無理だから」

すれ違いざまにぼそりと耳元でつぶやかれた言葉に目を丸くし、振り向く木南。
それに意味深な笑いを零し、中指を突き立て去っていく雲谷。
すべての生徒が、なにが起こったんだ、とうとう仲直りか…?などといろいろと想像する中、木南と雲谷の当事者だけが何も変わらず生活していた。


そんな疑惑の日々から数日後。
雲谷が上級生と喧嘩をしている現場に、なぜか無理矢理クラスメイトに連れていかれた木南。

「なんでおれが…」
「だって委員長なら止められると思って…っ」

空き教室の扉を開くと、ちょうど一人の先輩に殴りかかろうとする雲谷の姿が一番に目に入った。

「おい、雲谷」

その声にぴたりと拳を静止する雲谷。
そしてゆらりとドアの方を向き、真っ直ぐ木南に目を合わせると、不快な気持ちを隠すことなく舌打ちをした。

「お前このままだと速攻風紀にばれて、停学、…もしくは、退学だぞ」
「はあ?ばれねえようにやるか「おれが黙ってると思ってんのか」…まじくそうぜえな、お前」

引かないと分かったのか、また舌打ちをすると、木南を押しのけ廊下に出ていく雲谷。

「先輩方も何があったかは知りませんが、はやく教室戻った方がいいですよ」

そう声をかけると連れてきたクラスメイトも置き去りにし、去って行った。

「…雲谷くんの喧嘩を止めれるのは、やっぱ委員長だけだよ…」

他の人だったらぼこぼこにされてたし。
はあ、と青白い顔でため息を吐くと、クラスメイトも教室に戻って行った。



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