01


近づけてはならない二人がいる。

「イインチョー、聞こえないんでもっかい言ってくださーい、おっきな声でー」
「……」
「は?なに睨んでんの」

金髪に大量のピアス、制服を無残に着崩した完璧に不良という恰好の男、雲谷透(うのや・とおる)と、クールな眼鏡美人でクラスの委員長を務める真面目代表、木南宏哉(きなみ・ひろや)。
この二人の仲の悪さは学園中で有名だった。
なにかあるたび雲谷が木南につっかかり、最初は黙っている木南もいらいらすると睨み、たまに文句を言ってまた雲谷を怒らせる。
堂々巡りの喧嘩を毎日毎日繰り返していた。

今日もまた、雲谷は教卓の前に立ちプリントの説明をしている木南にやじを飛ばした。
最初は雲谷を無視して話を進めていたが、とうとう我慢がならなくなったのか

「――ほんと鬱陶しい」

そう言い捨て一睨みすると、また話を始めた木南。
それに我慢がならないと立ち上がり、ツカツカと前に詰め寄っていく雲谷。
それを眼鏡越しの冷めた目で見つめる木南の胸倉をつかみ、顔を近づける。
二人とも顔が整っていて眼福だが、いかんせん睨み合っていて何もときめきは生まれない。
(うわあもう早く学校終わってチャイム鳴って〜〜!!!)
そう祈るクラスメイトをよそに、いつもの口論が始まる。

「お前今何言った?」
「ここは、こうなって…」
「おい」
「…うるさいなあ」

まさに一触即発の雰囲気。
クラスメイトたちは祈るような気持ちで、早く終わってほしいとびくびくしながら、動向を見守る。

「――テメェ…」
「離してくれない?」

掴まれていた手をはねのけると、「あとは各自読んでおいて」とプリントを教卓の上に置くと自分の席に戻る木南。
その後ろ姿に盛大に舌打ちをし、教卓を蹴りあげる雲谷。
(こわすぎるよおおおお)

「雲谷、うるさい。ちょっとは黙れないの?」
「テメエ……」

(なんで委員長も喧嘩売るの!?)

一番の被害者はクラスメイトである。






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