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「香ちゃ、どうしよ…っ」
「誰にやられたんだ、それっ!」

それには何も答えず手の中で無残にちぎられたブレスを見つめる唯織。内を言わないつもりか、と瀬川が思ったとき、生徒会長の親衛隊長のチワワが、

「会長が唯織さまのブレスをちぎりましたー」
「なっ…!」

飄々と自分を裏切るようなことをした親衛隊長に、驚愕に目を開く会長。それに素知らぬ顔でそっぽを向く隊長。
のちのち唯織に、「あのときは僕の代わりに、ありがとうございます」と丁寧に菓子折りまで持ってお礼を言われデレデレな隊長がいた。

「お前、俺の親衛隊じゃ―――」
「おい、バ会長」
「かお――」

自分が大好きな瀬川から声がかかり、そのとたんに怒りを和らげる会長。だが、

「謝れ」
「……あ?」
「謝れよ、ひきちぎったこと。あれ、唯織の彼氏が特注で唯織のために作ってくれたもんだぞ」

ええええええええ!!!!!
唯織さま彼氏いたの…!?!?
そんなっっ!?!?
食堂は阿鼻叫喚の渦である。
そんな生徒たちの様子に目を丸くし戸惑う生徒会たち。自分たちが瀬川にキスしたときよりも何十倍も大きい悲鳴に不審に思う。

「かおちゃん…どうしよう…、僕、隼杜くんに嫌われちゃったら…」

そういってまたぽろぽろと泣き出す唯織。

「あ、いつは、香を使って俺らに近づこうとして―――」
「はあ?なに寝言言ってるんですかー」

会長の問いに冷めた声でぶった切る会長親衛隊長。

「唯織、お前生徒会のことどう思ってんの?」
「…?」
「恋愛感情とか持ってんの?」
「え、ないです…」

本当に何を聞かれているかわからないと純粋な疑問さえ浮かぶ表情。

「ほら、もうなんでそんなこと思ったのか分かんねえんだけど」

呆れた表情でため息をつく瀬川。

「唯織は彼氏にベタボレのゾッコンのメロメロなんだって。お前らなんか眼中にないって。な、唯織」
「はい。…本当に、興味がないんです…」

手の中のブレスを見つめたまま、こちらに見向きもせず呟く一言。
本当に空回りをしていただけだったと、ようやく生徒会のメンバーは気づいたのだった。





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