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「本当に、興味がないんです…」

それは、調子に乗っていた奴らを黙らせるには十分な一言だった。




事の始まりは2ヶ月前。
時期外れの転校生、瀬川香(せがわ・かおる)が学園に来たことから始まる。
副会長の愛想笑いを見抜いたことから、どんどん生徒会メンバーから気に入られ始め、今では学園でも指折りの美形たちに好意を寄せられている。
その中で、瀬川と同室になり、今では「親友」となっている子がいた。
それが月宮唯織(つきみや・いおり)。控えめな性格と美しい顔立ちで、高嶺の花としてまわりから静かに愛でられていた。
――――ーそんな唯織が、転校生に連れまわされている。
その噂はたちまち学園内に広がり。

「唯織ちゃんが笑ってるー…っ」
「かわいいー!!」
「「「転校生グッジョブ!!!」」」

初めの方は転校生をしめようとしていた過激派や熱狂的なファンも、瀬川と一緒にご飯を食べてほのぼのと笑っている唯織を見、その考えを改めた。
初めは生徒会などの美形を次々と虜にしていく瀬川に、一部の親衛隊から嫌がらせがった。痛々しい痣を作って帰ってくる瀬川に、生徒会の怒りは増すばかり。
生徒会のメンバーも、高嶺の花として愛でられていた唯織のことは知っていたけれど、自分たちの人気には勝てるはずがないと高をくくっていた。そのため、瀬川がけがをするたび、はたまた悲しい顔をしているというだけで、唯織とその親衛隊のせいだと決めつけ、細い腕を加減なく強くつかんだり体を押したりと、小さな暴力と口汚く罵ることでストレスを発散していた。

その頃瀬川への嫌がらせは、唯織の親衛隊長によって治まり、今では逆に瀬川が来たことで唯織が幸せそうだ、と温かく見守られていた。
瀬川も来た当初に着けていたバレバレの変装を解き、整った顔立ちを露わにした。
生徒会親衛隊に所属する生徒の中でも唯織は人気だったし、実は唯織の親衛隊に入りたかったけど人数が多すぎて泣く泣く生徒会の方に入ったという人もたくさんいる。
―――人気も、好感度も、すべてが唯織が上だった。

だけどそんなこと、唯織は知らない。
人から悪意を直接持たれることに慣れていない唯織は、最初は耐えていたけれど、大切な人に貰ったブレスを引きちぎられたときは、昼の食堂でぽろぽろと泣き出してしまった。

それに慌てたのは、瀬川と、昼食を取っていたすべての生徒たち。
真珠のような大粒の涙をぽろぽろと零す唯織に、呆然とする生徒会たちを押しのけ唯織の周りに駆け寄り慰める。

「おい、唯織っ!どうしたっ、なんで泣いてんだっ!」
「っひく、えぐ…っ」
「唯織さま…?」

嗚咽がこみ上げる声のまま、そっと手の中で壊れたブレスを差し出す。

「おいっ、それ、隼杜(はやと)さんから貰った大切なもんじゃねえか…!」

――――ハヤト?
瀬川と唯織以外のすべての人たちに、疑問が浮かんだ。



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