04



「紺っ!」
「ゆ、悠莉ぃいい!!!」

押し倒している颯太をどかし、僕に抱きついてくる紺。

「こ、顧問のたっくん呼んで来ようと思ったら、なんか委員長が来て〜…っ」
「大変だったね、紺」
「うぅ〜…っ」

見た目はチャラ男だけど、中身は純情少年の紺。風紀委員長からの熱烈な愛とスキンシップに、いつも涙目で僕に抱きついてくる。

「おーおー、何やら面白いことになってんじゃねーか」

ケタケタと生徒会室を見渡して笑う風紀委員長。

「あ?お前部外者だろ、なんでここにいんだ」

生徒会室は役職持ちの人しか入れない特別棟にあるため、一般生徒の立ち入りは原則禁止である。

「ぼ、僕は会長に御呼ばれしてぇ…」
「間延びしてしゃべんな、男なのに気持ちわりぃ。それが許されんのは紺だけだ」
「え」
「…っ!?」
「早く出てけよ、罰則とんぞ」

そう冷たく委員長が言うと、慌てて生徒会室を飛び出て行った。

「てめえも悠莉嫉妬させるためにこんなとこまであんなビッチ呼ぶんじゃねえよ」
「え…委員長、も、知って…?」
「あー?見て分かんだろ、あいつが悠莉嫉妬させるために抱いてるって」

きづいてなかったのは、僕だけ?
そう視線で紺に問うと、うん、と自信満々にうなずかれた。

「お、颯太。お前とうとう本気出すことにしたのか」
「え」
「まあね。わんこのふりで、従順キャラ演じて悠莉をモノにしようと思ったけど、あまりにも悠莉が可愛かったから」
「え」

これには僕も紺も目が点だった。

「いいんちょ、知って…?」
「ああ、まあ中等部んとき同室だったしな」

驚愕の事実である。

「てか中学んときの颯太知ってたら今の豹変ぶりは爆笑モンだぜ?あいつって、わんこっていうより」

――――狼だろ。
ケタケタと笑う委員長に、僕はそれだ、としっくりきた気持ちで颯太の豹変っぷりを見た。

「まーでも会長のおかげで、予定より早く悠莉に触れられた」
「――あ?」
「もう俺も従順なふりする必要はなくなったんで、これから覚悟しとけよ」

悠莉も、な。
ちゅ、とおでこに優しく落とされたキスに。
会長にもされたことがないようなやさしさあふれる口づけに、僕の中で何か新しい気持ちが生まれる予感がした。


end


く っ つ い て な い 。
なんで、どうして!?ひつさえも予測できなかった事態。
わんこが狼でした、っていうオチが好きです。



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