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全寮制の男子校に入ってしまったのは、一重に僕の学力不足もある。NLのゲームにはまってしまった僕は来る日もやり続け、気づけばテスト勉強のときすらゲームをやる日々。ある日恋愛ゲームをやる僕に気づいた母親に鬼の形相で怒られ、ゲームを没収された。推薦で1枠しかない高校に入れればゲームも返してもらえるし、しかも臨時収入も渡してもらえる。僕はその賭けに乗り、見事勝った。

―−だけどそこが全寮制の男子校だということを入学1か月前に知り、僕は膝から崩れ落ちた。
姉2人に元女子高だと言われ奮闘した結果なのに、まさか姉も母に買収されていたなんて。臨時収入で得たゲームをやりながら姉にネタばらしをされたとき、僕は人知れず涙を零した。



入ってみたところ、美紀ちゃんが来たら喜ぶような学校だなあーと思った。
隔離されている学校だし顔もいいから、ホモが多い。そういえば美紀ちゃんに毎日あったことを報告するように言われていたんだ。
美奈ちゃんには、僕が男装した女の子設定で妄想するから大丈夫と訳の分からないことを言われた。襲われたり口説かれたら逐一報告するように、血走った眼でそう言われた。

いくらそんな姉2人に言われたからと言って、僕はホモにもならないし肉欲の生活にも興味がない。はあ。とため息を吐き今日から3年間過ごす同室者に挨拶をする。
第一印象はイケメン。だけどそれ以上は何も思わなかった。

「どうも、佐倉美咲って言います。よろしくね」

衝撃は次の瞬間だった。

「―――佐々木恵吾。よろしく」


なんていう美声なんだろう………!!!!!




さっそく僕は恵吾くんのことを話した。興奮する美紀ちゃんと、二人っきりで過ごす夜…と危ないことを呟く美奈ちゃん。



恵吾は(くん付けはこそばゆいからやめてくれと言われた)僕と一緒に過ごすことが多くなった。同室者だし、なんと同じクラスだったから。

「恵吾ー、彼女いないの?」
「いない」
「そっかー」

僕としては早く恵吾が他の女の子を口説いているところが見たいのになあ。普段無気力な彼が本命を口説くときだけ声色を変えて…ああーたまんないなああ!

「恵吾、好きな人は?」
「…いる」
「え!!!」

8月に入るまで毎日のように聞いていた言葉に、ようやくいない以外の返事が返ってきた。テンションがあがって僕は尋ねる。

「恵吾イケメンだし、ちょっと無気力なのが珠にキズだけど、性格もいいし素敵だよ!」

そしてその美声で口説けばちょちょいのちょいだよ。それは言わないで呑み込む。

「……そうか?」
「うん!恵吾が告白すればころって落ちるよ!」
「……じゃあ、美咲で練習していいか?」
「!もちろん!」

本気モードの恵吾を見れるなんて!にまにましながら恵吾と共に夕食を食べて部屋に戻った。



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