03



「そ…た?」
「悠莉」

いつもと違う、なんでだろう。
そう、片言じゃないし、それに、なんだか獰猛な雰囲気が出て、る…?

「え、え…?」

どういうこと?僕だけついてけてないの?
不安に思ってまわりを見渡すと、紺もなにがなんだかわかんないというように口をパクパクして驚いている。会長とあの子も、目を丸くして颯太の豹変ぶりを見ていた。

「悠莉、あんな奴、もうやめろよ」
「え…?」

いつの間にか目の前に迫っていた、颯太の顔に思わず尻ごみするけど、そんなことはものともせず距離をつめられ、僕は颯太に押し倒されたような形だった。

「ちょ、え…!?こ、紺、助け…っ!!」
「おれには無理ぃぃ!!」

顧問の先生呼んでくる!!そういって生徒会室を出ていく紺。
なんでこの状況で顧問なんているの!紺のばかっ!!!

「こ、この際会長でもいいやっ、たすけ…んぅ!?」

会長に藁をもすがる気持ちで助けを呼ぼうとした瞬間、開いていた口を颯太の口でふさがれる。

「んぅぅ!?!?」

昼からしないような濃厚なディープキスを、3分くらいずっとされた。
「ふ、はあ、はぁ…っ」

やっと口が離されたとき、僕は酸欠状態だった。颯太はけろりとしている。ええー!?
唾液に濡れて光る唇をペロリと舐める颯太の姿に、どこがわんこなのー!と叫び出しそうになった。

「おいテメエ、颯太―――!!」

呆然としていた会長が、膝の上からあの子を落としてツカツカと詰め寄る。
もはやあの子は空気だった。落とされた拍子に「きゃあ…!」と募るように言ったけど、誰一人その子のことなんてみてなかった。

「会長がそーやって自分がほんとに悠莉に好かれてるか試すために浮気してるって、俺も紺も知ってんだけど」
「え…――」
「でもさー、ちょっと今日のはやりすぎだよなァ、悠莉泣いちゃったし」

ペロリと舌が乾いた涙の後をなぞるように伝う。目尻もちゅうと吸われ、顔が熱くなる。

「てか悠莉傷つけてまで気持ち確かめて、あんたは満足なわけ?」
「………」

いつものわんこ颯太はどこに行ったの…。
重い沈黙に包まれた生徒会室の外から、紺と誰かの声が聞こえる。

「ちょ、なんでいいんちょが来るの…!」
「んだつれねえなぁー、まあそこも可愛いんだけどな」
「ひやあああやめてよぉお!!」

バン、と大きな音を立てて生徒会室のドアが開かれる。
そこにいたのは、風紀委員長に熱烈ちゅうをされている紺だった。






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