02
「お前最近夜どこ行ってんの?」
「は?」
首元にキスマークをつけて、あいつが聞いてくる。
見せつけるように3つほど開けたボタンから、赤い花が咲いていた。
それをなるべく目に入れないようにしながら質問に答える。
おれとあいつを入れる数十人はもう推薦で大学が決まったので、特に授業に出ることもなく、今おれとあいつは二人で屋上にいる。
「女か?」
「お前ってそっちの想像しかないんだな…」
呆れたようにため息をつくと、まあな、とニヤリと笑い返された。
「バイトだよ、バイト」
「ふーん。なんの?」
「居酒屋」
「どこ?」
「駅前のとこ」
「あー、あのラブホ街ね」
思い出すように言われた口調に、誰かと行ったことあんのかよ、とか女々しいことを思ったけど、口に出すのはやめた。おれはあいつの女じゃないし。
「今度行くわ」
「絶対やめろ」
「は?んでだよ」
だってお前、ふつうに知らねえお姉さまと一緒に来そうだし。
大体バイトだってもとはお前を忘れるために忙しいとこ選んだんだし。
まあそんなことも言えるはずもなく。
「働いてるとこ見られたくねーし」
そういえば、ふうんと元から対して興味がないのか、あっさりと引かれて次の話題になった。
所詮そんなものだよな、お前の中のおれって。
むなしさだけが残った。
「あーつかれたー」
花の金曜日だからか、会社帰りのサラリーマンが宴会とかしてて、すげえ疲れた。
なんかおしりとか触られたし…。酔っぱらいだから仕方ないとしても、ちょっとへこんだ。おれ男なのに。ほかに女の子働いてるのに…。まあ、女よりは男の方が笑って済ませるしなぁ。
くたくたになった体でとぼとぼと繁華街を抜けてバス停に向かう。
もうこの時間バスないんじゃねえ?一応こうやっておれみたいに夜遅くまでいたやつのために、ふつうの市営バスよりは遅くまで走っているが、さすがにもう日付が変わる時間にはない気がする。
今から寮戻るのだるいなー。早く一人暮らししたい。
あと1週間後におれは寮を出て大学近くに一人暮らしをすることになっている。これであいつとも今みたいに会うことは少なくなるだろうし。
いい加減おれもあいつに対しての恋心は冷めてきている気がする。
大体なんであいつもおれが好きだってこと知っててわざわざ見せびらかすようにしてくんだろ。間接的に振ってるってことか?
そこまで考えて気分がずーんと落ちたところで。
ぐい、と右腕が後ろに力強く引かれた。
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