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好きな人がいる。
でもそいつは、おれの気持ちを知っているのに、にやりと見せつけるようにほかの男との情事をほのめかしたり、おれの目の前でキスしたりする。
前はそんなとこ見たら、目の前が真っ暗になって、それからどうしようもなく涙が出てたけど、最近は諦めがついた。
だってあいつはおれと付き合っているわけじゃないし、おれが一方的にあいつのことを好きなだけだし。

受験生でもある高校3年生。
おれはあいつを忘れるために勉強に打ち込み、見事国立大学に推薦で合格した。勉強しているときも最初の方は大丈夫だけど、集中力が切れるにつれて、公式じゃなくてあいつの顔を思い出したりして、途中なんとも言えない切ない気持ちになった。
あいつも早々と大学を推薦で合格して、しかもおれと同じ大学。違う学部だけど、大学からもまた一緒。それに喜んでいいのか悪いのか。とにかく、あいつはとくに受験だからって誰かを抱くことはやめず、今日も後輩の可愛らしい男子を誘ってた。

大学に受かったから暇になったおれは、部活もなにもやっていなかったから戻る場所もなく。とりあえずお金がほしいと思って、バイトをすることにした。
ほかの奴らはみんな一般とかばっかだから、のんきにバイトばっかするのは悪いと思って、おれは学園のみんなが寄り付かないような繁華街にある居酒屋でバイトをすることにした。
近くにラブホとかはあるけど、おれは男だから変なやつに声をかけられることはないし、寮も実際今の受験の時期には規則が緩い。どっか模試受けに行ったりするし、移動が激しいからいちいち外出許可書を発行するのもめんどくさい、って煙草くさいイケメン寮監がだらしない恰好で言ってた。

繁華街だからか、人の波は途切れることはなく、おれは受験勉強とは違いあいつのことを考える暇もなく働くことはできた。
だけどそれは仕事中だけで、帰り道バスに乗って寮に戻ったりしているときのあの静かな時間は、反動のようにぶあーっとあいつのことを思い出して、一人ちょっと泣いた。

「同室とかじゃなくてよかった…」

あいつの同室のやつ、部屋が精液くさいとか喘ぎ声がうるさいとか散々文句言ってたし…。
そんなことも思い出して、余計に沈んだ。
というかあいつ、なんであんなに抱いてんだよ。絶倫かよ。最近は後輩の男に手だしてるらしいけど、お前週末は女んとこ行ってるよな。
それじゃあもし付き合ったとしても浮気するな、と想像したら乾いた笑いがこぼれた。


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